AIと、きみと、放課後のこと。
Algo Lighter アルゴライター
プロローグ
西暦20XX年。僕たちの日常は、いつの間にか「彼ら」で満たされていた。
手元のスマートフォンに話しかければ、まるで旧友のように軽口を叩きながら最新ニュースを教えてくれるAI。リビングのスピーカーは、家族の誰よりも僕の好きな音楽ジャンルを把握していて、気分に合わせたプレイリストを流してくれる。街角の案内表示も、道行く人のファッションチェックも、今やAIがこなすのが当たり前の光景だ。
そして、ここ、私立鳳翔高等学校もまた、そんな時代の最先端を行く場所の一つだった。
国の「次世代共生AIプロジェクト」の実証指定校。そう聞くと何やら堅苦しいけれど、要は最新型のAIたちが僕たち生徒と一緒に学園生活を送っているということ。高速Wi-Fiが校内の隅々まで張り巡らされ、教室の設備はIoT化され、図書室の貸し出しゲートは顔パスならぬ“AIパス”でスムーズに通り抜けられる。体育館ではホログラムが飛び交い、AI搭載の見守りカメラが、良くも悪くも僕たちの日常を記録している。
そんな鳳翔高等学校に、新しい風が吹こうとしていた春。
僕、雨宮一真(あまみや かずま)は、少しだけ浮かれた気分で校門をくぐった。新学期。新しいクラス。そして――今年度から導入されるという、新型の人型AIロボットの噂。
なんでも、より人間らしい思考と感情表現を目指して開発された、特別なAIらしい。
「どんなヤツなんだろうな」
ポケットの中のスマホAI、《Linky(リンキー)》が「楽しみっすね、カズマ先輩! 新しい友達ができるかも!」なんてお気楽な音声で返してくる。こいつは昔からの相棒みたいなものだけど、人型となるとまた感覚が違うだろう。
まだ肌寒い春風が、桜の花びらを運んでくる。
丘の上に建つ僕たちの学び舎では、今日もまた、AIと、僕ら人間と、そしてまだ誰も知らない「何か」が、新しい物語のページを開こうとしていた。
そう、これは、そんな少し未来の放課後を巡る、僕と、きみと、そしてAIたちの、ささやかだけど、きっと忘れられない日々の記録。
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