第3話:はじめての依頼!打倒魔王パーティ、ついに出動…ですよね?

マチルのおばさんから話を聞いて――私の胸は、熱く、燃えていた。


「……ついに、私たちの初仕事……!!」


こぶしをギュッと握りしめる。


「よしっ!やるぞっ!!!」


私は勢いよく家に戻る。


「ユートさん!!起きてください!!初仕事ですよ!!」


「……えー……だる……」


「兄さん!!!今日は金曜日じゃありませんよ!!」


「でも今日は3の付く日……」


そしてマチルの家にも。


「マチル!さあ、外に出ましょう!!」


「……外……陽の光が……」


何を言われても、諦めません!!

今日の私たちは絶対絶対ずぇ~ったい!活躍するんですからね!!!


「さあ!!全員、出動です!!!」


ユートは寝ぐせだらけのままだし、兄さんは「今日は当たるのに、絶対当たるのに……!」とかぶつぶつ呟いてて、マチルは「終わり……終わりが来る……」と震えながら、


――それでも、全員ついてきた!さすが英雄メンバーです!!


「お前……しつこすぎるんだよ……」


果樹園の裏の空き地で、私はビシッと指を突き上げる。


「これが……私たち打倒魔王パーティの――」


「初☆仕☆事です!!!」


相変わらず雲一つない青空に、気合いの声がこだました。


***


マチルのおばさんに、改めて現場を見せてもらいました。

リンゴ畑の奥、草が押し潰されたあの空間。


「任せてください、おばさん!私たち打倒魔王パーティが――この謎、必ず解き明かします!」


みんなも来てくれたんです!絶対この謎、解決できる!

なんてったって初仕事なんですからね、気合入れないと!


「よーし!調査開始です!!」


私はその場にしゃがみ込み、地面をそっと撫でる。

土の状態、草のつぶれ方、あらゆる情報を見逃さないように――。


「この辺りに……不自然な痕跡がきっと……!」


そんな私の背後から、ユートの声。


「暇……」


うろうろしている。

手をポケットに突っ込んで、気だるそうに。


「俺、散歩……じゃなかった、調査してくる……」


「え!?でも、ここの調査もまだ不十分ですよ――」


私が言葉を終わらせる前に、ユートはどこかに消えて行ってしまった。


ちょっと困惑……ううん、大丈夫!きっと調査、してくれてます!勇者様なんですから!!


気を取り直して……ふと、木陰に目をやると――。


「……兄さん?起きてますよね?」


横になって……目を閉じている兄さんが目に入った。


「戦略戦略。体力温存だ。夜に全てを賭けるからな……zzz……」


信じられない……。


兄さんの寝ている後ろ。マチルが木陰にうずまっている。


「マチル?あなたは……」


マチルは、ぎょろっとこっちを見上げた。


「……外、無理……。陽の光……嫌い。もう帰りたい……」


「……そっか。でも、来てくれてありがとうね……」


ああ。私たち、本当に魔王を……だめよレリィ、弱気になっちゃ!

私たちなら絶対できるんだから!

そのためにもまず第一歩!


草押し潰され事件の謎を、必ず、私……たちが……。


……。


「もういいです!!!」


思わず、声を張り上げてしまった。

でも、みんなおかまいなし。

ユートは興味なさそうにこっちをチラッと見て、マチルがちょっとびっくりして。

兄さんなんて、もういびきかいて寝てるし……。


「一人でも、やりますから!!」


あの潰れた草の所で、私はしゃがみ込み、地面に手をつける。

草をどかして、土をかき分けて、木の根元を覗き込んで。


「……絶対、見つけてやる……」


「私が、見つけてやる……!」


そうすれば、みんなもちょっとはやる気を出すかもしれない。


「悔しい……」


ぽつりと、声が漏れていた。


でも、そんなこと、考える意味は無い。


泥だらけの手で、必死に草をかき分ける。

ぐちゃぐちゃになった髪を、無理やりかきあげて、前を睨みつける。


すると――。


「……ん?」


指先に、硬い何か。

そっと掘り出してみる。


手のひらに乗ったのは、緑色で、うっすら銀色に光る、「かけら」のようなもの。


「なんだろう、これ……」


小石とはちょっと違う。

でも、金属っぽくもない。

見たことのない、何か。


ふと、周囲を見渡す。

森の入口のあたりにも、小さく光を反射する――「それ」があった。

それは、森の奥に向かって、転々と続いている。


手がかりかもしれない。


「よし!」


私は、かけらを握りしめ、膝を叩いて立ち上がった。


「もうちょっと調べれば、絶対解決する!」


そして、今度こそ私たちは生まれ変わる!


「これこそ、私たち打倒魔王パーティの――」


「偉大なる第一歩、ですから!!!」

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