閑話 笹宮まどかの初恋~その5~
大変なことになってしまいました。
笹宮まどか15歳。
人生最大のピンチです。
それはもう,古典の問題を二次方程式で解答しなければならないくらいピンチです。
突っ込みはいいので聞いて下さい。
楢崎君がモテてしまいました。
調理実習は大成功でした。
前日の買い出しは,まるで夫婦みたいと舞い上がっちゃいました。
その後,彼の部屋で淹れ立てのカフェオレをいただきました。
とても美味しかったです。
彼の夢も,その原点も聞くことが出来ました。
大収穫です。
私の悩みも少し打ち明けることが出来ました。
そして。
私の気持ちも少しだけ,伝えることが出来ました。
はっきりと『好き』とは言えなかったけど,私は彼のことが好きなんだということを自覚できました。
大進歩です。
本当なら。その辺のお話をもっともっとしたかったんですけど,今はそれどこじゃありません。
調理実習は,彼の独壇場でした。
私も何度かお手伝いを申し出ようと頑張ったのですが,気付けば次の行程に進んでいて,割り込む余地がありませんでした。
家庭科の智子先生と親戚だったと聞いたときは凄く驚きました。
完成したクレープはとても美味しかったです。
特に,私のリクエストを聞いて仕込んでくれたアップルコンポートの味は,カフェのアップルパイの中身にとても近い味わいでした。
あの時は『絶望』なんて言いましたが,楢崎君は私の予想の遥か先を行ってました。
ずっと研究していたんでしょう。
本当にすごい人です。
本当に素敵です。
ただ,ちょっと問題が起こりました。
気が付けば,私達の調理台の周りに,大勢のギャラリーが出来ていました。
彼の手際をうっとりして見つめている女子が結構いました。
危険です。
超危険です。
危険と言えば翌日も大変でした。
みんなでカフェに行きました。
3人がカフェ店員スタイルの彼を見て,うっとりし始めました。
真里花は特に危険な状態でした。
大川君までうっとりしていて,『あなたは男子でしょ!しかも彼女持ち!』と叫びそうになりました。
週が明けて月曜日。
予想以上の事態が起こっていました。
彼の周りをたくさんの女子が囲んでいました。
予想以上の反響です。
せいぜいこっそり告白してくる子が何人かいるかもぐらいにか考えていませんでした。
失態です。
女子達は,お菓子作りについて彼に話しかけているようですが,下心丸出しの子も何人かいて,純朴な彼がだまされるんじゃないかと戦慄しました。
あと余談ですが,何人かの男子が『楢崎が嫁だったら,男でもアリよりのアリじゃね?』『わっかるー!』と,とんでもない会話をしているのを聞きました。
誰か助けて下さい。
楢崎君の貞操のピンチです!
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