一通のはがきに書かれていた文面。 それは、男の積年の悲願であった。 彼は選ばれたのだ。選ばれなかった者たちの希望の光として。・「誰もが喜ぶディストピア」という、何とも不穏な体系を完成させた本作。 誰かにとっての不幸は、また別の誰かにとっては幸福になる。人によって幸不幸の切り口は異なる。 それを「適切」に配分した結果が作中の世界なのだろう。 提示されたものは、明らかに歪んでいる。 それが一見は公平に見える点もまた、何ともな読後感を生み出す。 普段の一歩先を垣間見るSF作品だろう。