第6話ーハズレスキル

1時間の間にいろいろと聞かれ前回の測定日から今日までの間にどんなことがあったかを事細かく話すことになったが、自身のことながら面白みのない人生を歩んでいるなと感じていた。



 日々、生きていく為に会社に行き金を稼ぎ稼いだお金は今後のためにと貯金に回し質素な生活を送る。こうなってしまったのには色々と事情があったが聞かれたのは前回の測定日からのことだったので話し辛い部分に関しては聞かれることはなかった。



「色々と聞いてごめんなさいね、これも仕事でね。魔力持ちになる過程がわかれば他の魔力なしの方にも役に立つからね」


魔力0の状態から魔力を得た原因が特定されればほかの魔力0の人間にも応用できる。その理屈はわかるが・・・



「まぁ、今までも同じようなことをしてるけど成果は0なの。決まった行動パターンみたいなものもないし完全にお手上げ。義務的に聞いてはいるけど何が原因で魔力に目覚めるのかは全く謎ってのがこの質問で得られた答えね」



彼女の言う通りでそんなものがわかっているなら世間一般、最低でも俺たちのような魔力なしには知らされていないとおかしい。となると何もわかっていないんだろうということはわかっていた。



「そもそも行動パターン把握するなら普段から事細かく報告させて、1カ月ごとに測定してってしないと意味ないってーの」


愚痴のようなものが聞こえるがこちらとしてはそんなめんどくさいことはごめんであると言いたい。そもそも魔力0は結構な人数がいるのだ。その人たち全員にそんな措置をしていたらどれだけの人材と費用がかかるか分かったものではない。



「とまあ、愚痴はここまでにしてお待ちかねの固有スキルの測定といきますか」


そう聞いて背筋が伸びた気がした。大した魔力値ではなかった為、固有スキルがなんであっても特に影響はないんだが小さい頃から漫画やアニメで触れ特殊能力に憧れていた世代としてはこのわくわくせずにはいられなかった。



「よろしくお願いします」


「そんなに緊張しなくて大丈夫だよ、じゃあこの板に触れてくれる?」



そういって彼女はA4サイズほどのタブレットのような物を取り出した。

タブレットのようにディスプレイがついていたが外見はそれ以外は石というアンバランスな状態を訝しげに見ているとそれを日和は、机にディスプレイを下にして置いた。


言われた通りに恐る恐るその置かれた板に手を当てる。


「これは、鑑定石とは違ってその人の持ってるスキルを表示するスキルボードっていう石板でね。まぁなんでこんなものが思うかもしれないけどダンジョンからの出土品だからとしか言いようがないね。こっちは鑑定石とは違って結構出土するけどあんまりドロップしないからそれなりに高いんで壊さないでね」



思わぬ脅しを喰らい慌ててスキルボードから手を離す。


「そう簡単に壊れないから大丈夫だよ」

そうは言っても高いと言われると慎重になるのが貧乏人の性って奴だ。


日和がスキルボードを持ち上げると、ディスプレイ部分にある文字が表示されていた。

『特攻』


そこには物騒な名前のスキルが表示されていた。



「ああ、そんな顔しなくても自爆特攻とかの特攻じゃないから大丈夫だよ。しかし特攻かぁ・・・」


不穏な一言の後にさらに光り、スキル名の下にスキルの説明が追加された。



「スライムに対して特攻を得る」



その一文だけであった。



「あちゃースライムかぁぁ・・・」

明らかに残念そうな彼女の様子に恐る恐る聞いてみる


「そ、そんなにまずいんですか?」




「特攻スキルはね、ある種の魔物に対して特効が働いてダメージが増えるみたいなスキルなんだけど、特攻先の魔物が固定でしかも変更できないからねぇ」



「話だけ聞くと有用なスキルに見えますけど・・・」


ゲームなんかだと特攻スキル持ちっていうのは重宝される印象がある。



「この特攻っていうのが厄介でねぇ。あなたの場合はスライムに対しては特攻なんだけど、それ以外のモンスターに対しては逆にダメージが与えにくくなるの」


「えっ!?」



「まぁご存じかもしれないけどダンジョンにはいろんな種類のモンスターがでるから1種類のモンスターに特攻であっても他のモンスターに対してダメージが与えにくくなるなんてスキルはね・・・」


「それは確かに困りますね・・・」



探索者として大成するなら深くダンジョンに潜る必要がある。潜れば潜るほど産出されるドロップ品が高くなるからだ。一階層で得られる魔石と10階層で得られる魔石では10倍以上の値段の差がある。そうなるとこのスキルは非常に厄介なスキルと言える。



「しかも固有スキルはオフにすることができないし、特にあなたの場合はスライムに対しての特攻だからねぇ」


「スライムだとさらに何か問題があるんですか?」


これ以上悪いところを聞くのは心情的にも思うところがあるが聞いておくに越したことはないと耳を傾ける。



「スライムは基本的に大して強くないモンスターでね。浅い階層で出ることがほとんどで、現在世界中で確認されているダンジョンで深い階層でのスライムの出現は確認されていないの。つまりあなたのスキルが発生する相手は探索者としては旨みの少ないモンスターに対してのみ発揮するスキルで、失礼な言い方だけど探索者を目指すものとしては【ハズレスキル】と呼ばれるスキルってこと」


物怖じしない態度で飄々とこちらのスキルについて伝えてくる。

まぁ変に濁されるよりは、はっきり言ってもらったほうが楽だったりもする。

明確に自身の固有スキルが【ハズレスキル】と言われたことでかなり心に来るものがあったが、今までなかった物が0が1になったのだからと自分を納得させ淡い期待を抱いていた、探索者になってのダンジョンドリームに別れを告げた。




「なるほど・・・」


こちらの表情を察したのか



「まぁ探索者にならないのであれば特に問題ないスキルだから気にしなくて大丈夫だよ!」


と励ますように言われた。



まぁ確かに探索者にならないのであれば特に問題のないスキルだ。スキルの中では日常生活で不便になるものもあるというからそう考えればまだマシの部類と言えるだろう。



「ちなみに、このあとダンジョン実習も受けられるけど受けてく?」

「あっはい、受けていきます」



落ち込んだ心を奮い立たせ返事を返した。



ダンジョン実習とは、魔力有りとなった者はダンジョンへの潜入が許可される為、ダンジョンのなかでの注意事項などの説明を受ける必要がありその為の実習である。魔力有りとなってもこの実習を受けていないと潜入することは出来ない。探索者になる気が無い者は実習を受けずに済ませてしまう者も多い。



そもそも市役所などに隣接されている施設ではダンジョンが存在しないので実習を希望する者は最寄りのダンジョンへの移動や別日に改めてとなる為、受けてない者は結構多い。


せっかくダンジョンのある所まで来たのだからということで先ほど探索者になる気はないと思ったが受けていくことにした。


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