同期の結婚式
森杉 花奈(もりすぎ かな)
同期の結婚式
同期の結婚式は6月だった。
私も招待客のひとりとして、一緒に結婚式の
披露宴に参加した。彼女とは入社式以来の関
係で、一緒に仕事をすることもあった。仲は
そんなに悪くなく、飲み会やコンペでも一緒
にいることが多かった。また一人片付いてい
くのか。沢山いた同期も次々寿退社していく。 おめでとうと率直に思う。でも、同期が次々
会社を辞めていくのはやはり淋しさを感じる
のだった。
「こっちに来て。ブーケトスが始まるよ」
もう一人の同期に呼ばれて私も向かう。
花嫁と花婿が並んでやってくる。どうやら
ブーケトスをするみたいだ。花束が投げられ
る。受け取ろうと手を伸ばしてみた。フワッ。
手の中に確かな手応えがあった。花嫁からの
ブーケだった。
「次はあなたの番だってことだよ」
私はその場に立ち尽くしていた。
今日も残業。最近大きなプレゼンがあるら
しく、上司がピリピリしている。私はという
と資料作りや雑務で非常に忙しかった。
「ここ急いで手直ししてくれる」
「お客様にお茶をお出しして」
「悪いけど、コーヒー入れてくれないかな」
みんなにいろいろこき使われていた。
「大変だね。みんなにいろいろ頼まれて」
一級社員の田中さんに声をかけられる。
「みんなにそれだけ信頼されてるのかもね」
「そんな。とんでもない」
「君みたいな人がいると、みんな本当に助か
るんだよ。これからも頑張って」
「ありがとうございます」
田中さんは行ってしまった。
先週は同期の結婚式。今週はプレゼンの手伝
い。忙しくて旅行に行く暇も有りはしない。
このプレゼンが終わったら、今度まとめて有
給休暇を取って、海外でバカンスでも楽しん
でこようかな。なんてことを考えたりしてい
たら、コピー機が紙詰まりを起こし始めた。
大変だ。どうしよう。コピー機はトナーが
なくなり、更に紙詰まりを起こしていた。私
一人じゃ何もできない。困っていると先輩の
沢渡さんが見かねて手伝ってくれた。
「大丈夫?」
「あ、ありがとうございます」
「君ちょっと最近無理しすぎてない?」
「いえ。そんなことは」
「たまには周囲に甘えたら。何でも君一人で
抱え込もうとしないで」
「そうですね」
「今度息抜きにドライブにでも行こうか?」
「はい。ご一緒します」
「じゃあ、今度日程調整してドライブに行こ
う。たまにはリフレッシュしないとね」
「はい。ありがとうございます」
沢渡さんとドライブの約束をしてしまった。
私のことを気遣ってくれた。沢渡さんってい
い人なのかも。もしかしたらブーケトスは本
当に効果があるのかな。私は沢渡さんのこと
が少しずつ気になり始めたのだった。
同期の結婚式 森杉 花奈(もりすぎ かな) @happyflower01
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