第24話 リーダー
シャックスたちは積極的に他の探索メンバーを探し、交流を取ることにした。
そして、エルフの里を紹介し、彼らの交流の架け橋になるつもりだ。
大陸の主攻略には、人数が必要だからだ。
しかし、第一陣の探索隊はエルフの里を見つけられなかったが、なぜか第二陣は自力で続々とエルフの里を発見している者たちもいた。
その変化は、今回発生した嵐によるものだとのちに判明する。
この時期、未踏大陸では、暴虐の嵐と呼ばれる季節がやってくる。
いつもの嵐より風が強くなり、降水量も増えるため、地形が変わってしまうのだ。
その影響で、川のいくつかが氾濫し、探索隊は普通なら通らないルートを歩く事を強いられた。
その道の途中に、エルフの里に繋がる隠し通路が近かったため、相次いで発見されたのだと言う。
ちなみに、エルフの里は定期的に住処を変えており、今までも別の場所で似たような事が起こり、モンスターがやってくる事があったらしい。
怪我をしていたエルフたちの復帰がすすみ、負傷した者たちの具合が回復に向かったところで、ドラゴン討伐への案が練られていく。
ドラゴンと出会ったり、見かけたパーティーは想像よりも多く、状況を把握している者が何人かいた。
彼らの話によると、慢心したドラゴンだったからかろうじて、命を拾えたという。
しかし、拾えなかったものも当然おり、なくなった探索者の数もそれなりに存在した。
そういった話が明らかになったことで、単独での撃破は明らかに無理だというのが、第二陣の共通認識になった。
そのため今のところは、手柄を独り占めしようとしたパーティー達はいなかった。
自分の力に奢るサーズ達以外は。
サーズは他の者達の意見に同意し、強調する姿勢を見せつつも、手柄を独り占めするチャンスを探していた。
シャックスは合流してきたサーズやロレンス達を見て、警戒心を深める。
他の探索パーティーが合流してからシャックス達は大陸の主攻略に向けて、特殊モンスターを集団で倒す事にした。
探索を少しづつ進めながら、誰がリーダーに相応しいかも決めていくことにする。
探索者達は意見を出し合う。
「なあ、誰がリーダーになれば良いと思う?」
「頼もしいのは当然として、それなりに強くなくちゃな」
「決断力があるのも大事だぞ」
各探索パーティーのパーティーリーダーには様々な個性があった。
脳筋だが、補佐が有能なもの。
知略に長けているが、人望がやや心もとないもの。
何も考えずに、圧倒的な実力でねじ伏せるカリスマのあるものなどなど。
「うちのリーダーがいい。一番頼もしいぞ!」
「いやいや、うちだ。強いし筋肉ある!」
「筋肉は関係ないだろ。それより頭だ。かしこくないとな!」
各自リーダーに求めるものが違うため、議論は紛糾してしまう。
しかしそれでも、戦闘時の切り替えはしっかりできていた。
モンスターを前にした彼らは、思考を切り替えて敵を倒していく。
集団戦の訓練は順調に進んでいくが、ある時分け前で諍いが起こってしまう。
諍いはサーズが起こしたトラブルだった。
「俺達が一番活躍した。なぜ大して働きもしない人間に分け前を渡さなければならないんだ」
アリーナでの試験の時は猫をかぶっていたが、彼の猫の皮はだいたい剥がれ落ちていた。
サーズの言葉にロレンスが同調する。
「そうだ! 自分の力量考えろ!」
モンスターの貴重な素材は、活躍した者が先に得るべきだと主張する。
シャックスはある意味、それでも良いと思っているが、他の者達が苛立ち始める。
「いい加減にしろよ。目立たない連中だってしっかり仕事してるんだぞ」
「自分勝手なことをいうな。それじゃ、前に出ないやつがいつまでたっても、何も得られないじゃないか」
分裂させないためにどうすれば良いのか分からないシャックス。
やったのは腹を割る事だった。
「言い争いはやめるべきだ。ここまで大勢で行動することは今までなかっただろうし、意見が割れるのは仕方がない。それぞれ言いたいことが山程あるわけだから、今日は探索はやめにして里で美味しいものを食べたり、飲んだりして話をしよう」
宴を餌にしてアルコールなどの力も借り、彼らにじっくりコミュニケーションを取るように進めた。
その日の夜、探索メンバーたちはエルフの里で夜通り思いを打ち明けあった。
どこの出身であるかや、どんな目的があるのかを、語れることはすべて語れるようにシャックスが促したのだ。
互いに本音を出し合い、良いことも悪いことも指摘し合う。
それは、セブンがやったことをまねた結果だった。
セブンの下で世話になっていた時、シャックスが聞いた話だった。
一人で行動しがちだったセブンだが、唯一集団とうまく行った時に、腹を割って話をしたのだといった。
そのおかげで即席のパーティーは、それ以降分裂せずにすむようになった。
サーズやロレンスたちは不満そうだったが、シャックスから見て、不気味なほど静かに場を静観していたのだった。
この事がきっかけで、シャックスが臨時リーダに抜擢される。
驚いて他の人間に譲ろうとするが、9割がシャックスがリーダーになるのが良いと言った。
仲間達もこれに同意する。
サーズたちだけはシャックスを気にくわず、睨みつけていた。
とある日の夜中。
ハクはエルフの里にある祠を掃除していた。
ミザリーはあくびをしながら、傍でその様子を見つめる。
ミザリーはハクに対して「変わってる、どうして?」と言った。
ハクは掃除をしながら続けた。
「お世話になっている所の偉い人には礼を尽くしなさいって、両親から言われているからね」
その祠は誰も見向きもしなくなったものだった。
エルフ達も忘れていたものだ。
たまにミザリーは掃除を言いつけられていたが、それはただ単に放っておくとどこかへ行ってしまうお転婆なエルフの少女に、何らかの仕事をあたえたいがゆえのものだった。
ミザリーは不思議そうに見つめながら、ハクが掃除する様を見つめる。
「神様とか、何か強い物はこの世界にいると思うんだよね。きっとその人たちが運命を操っているんだよ。だからいざという時のためにご機嫌をとっておかなくちゃ」
ミザリーは小首をかしげながら、雑談を続ける。
「人間、そういうの、考えない、思ってた。珍しい」
「そうかもね。僕が特殊なんだと思う。あ、あと何だかこの祠には親近感を感じちゃってさ。気に掛けなきゃって思ったんだ。変かもしれないけど」
「うん、変」
雑談をする二人が視線をそらした時、祠がほんの少し光った。
眠くなったミザリーとハクはその場を別れ、夜は更けていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます