現実世界でも異世界でもみんなに虐められたので神様からもらった最強の能力でそいつら全員に復讐し世界を滅ぼす

くりすとふぁー

第1話 神様からもらった最強の「能力」で親も先生もクラスの奴らも異世界の奴らも全員消した

 僕の名前は陰道類かげみちるい

 どこにでもいる普通の男子高校生だ。


 どこにでもいる普通の被虐者で、孤独で、無能で、価値がなくて、最低で、誰からも愛されない嫌われ者の高校生だ。


 そんな僕だから、学校には1人も友達がいない。

 当然のように学校では虐められているよ。

 みんな僕を見ると、イライラするらしいんだ。


「陰道、ちょっと来い」


 いつもの様に校舎裏に呼び付けられる。




 彼らは僕を殴りつけ、蹴りつける。

 ただし顔など目に見える部分には行わず、服下で隠れる部分を痛めつける。何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。


 目に見えるイジメだと、問題になりかねないからね! 最近のイジメは進んでるなぁ。


「……う……あ……」


 カースト一位の赤城がうずくまる僕の髪を引っ張り、無理やり引き上げながら言う。


「そろそろ終わるか。陰道、今日分の『存在料』よこせ」


 僕は急いで財布からお金を取り出す。

 これを出さないと更に痛い目に会うんだ。


 幸い僕の家はお金持ちで、お金だけは困らないよ!


 このように僕は、イジメを受けている。

 とは言っても、物理的にイジめるのは一部の人だけなんだけどね!

 先生とかクラスメイトの大抵の人は僕を痛めつけたりしないよ!

 まあ助けてくれることもしないんだけどね。

 みんな僕のことはいつも無視してるよ。







「がばっ……はぁっ……はぁっ……」


「どうだ、少しは反省できたか?」


 そう言って父は熱湯を張った浴槽に、再び僕の頭を押さえつける。


「がばっ。~~~~~っ!」


『教育』はいつも風呂場で行われる。

 理由はいつもまちまちだが、今日の理由は「成績が悪かったから」。

 これはまだ理由としてはましな方で、「へらへらしているように見えたから」とか「お前への『教育』に時間をとられているせいで、仕事がうまくいかなかった」とか理不尽な理由のほうが多い。


「まず、その腐った性根から叩き直さないとな。性根が腐ってるから、親を舐め腐っているから、平気でそんな点数が取れるんだろ?」


「はぁっ……。はぁっ……。ご、ごめんなさい、父さん……」


「なあ、俺のこと舐めてるんだろ? 親を舐めてるから言うことが聞けないんだろ?」


「っ!? がっ……!」







 楽しいのは学校だけじゃないよ!

 家でも僕は愛されているんだ!

 父さんは僕を熱心に「教育」してくれるし、母さんはそれを見て見ぬふりしてくれてるよ!

 「お前なんか産まなきゃ良かった」が口癖だよ。

 それでも僕を普通に生活させてくれてるから、感謝しかないね!




「何名様ですか?」


「あっ……一人……です……」


 だから僕の唯一安らげる場所はファミレスなんだ。もちろん家からも学校からも離れた、ね。

 家にも学校にも居たくないからファミレスでドリンクバーを頼んでいつも、人生(暇)を潰しているよ。ここには僕を痛めつける人は誰もいない。

 誰も僕のことを知らないから無関心で居てくれるんだ。脅威がないから、怯える必要がないから僕はここにいるときだけ心休まることができる。




 日が暮れ、僕はいつものようにファミレスから帰途に着く。

 そしていつものように信号を見ずに下を向いて横断歩道を歩いていたら、横から大きなクラクションが鳴る。


 ――ファアアアアン


「あ」


 僕の意識はここで途絶える。

 どうやらトラックにはねられたようだ。


 ………

 ……

 …





 ここはどこだ?


 一面真っ白く、何もない世界。


 僕はどうやらやっと、死ぬことが出来たのかな。


 でも、死後の世界があるなんて聞いてないよ。

 死んだら「無」になれると思っていたのに。

 それだけを楽しみに生きていたのに。



「ふむ。お主、碌な人生を送ってこなかったようじゃな」


「っ!? わっ!」


 突如、僕の隣にいかにも「神様」といった感じの老人が現れた。


「あ、あなたは……?」


「わしか? わしはお主の世界の概念で言うところの『神』じゃ」


 やっぱり神様だった!


「ということは、やっぱりここは死後の世界? 僕はこれからどうなるの?」


「一つ目の質問について、大体その認識で合っておる。2つ目の質問についてじゃが――」


 神様は髭を触りながら笑みを浮かべる。


「お主はこれから異世界転移して、新しい人生を歩むことになる」


「異世界……? 転移……? う〜ん、よく分からないけど、嫌だなあ。だって僕って死んだんだよね? それならすぐにでも僕を『無』にして欲しかったんだけど」


「そう人生を悲観するでない。確かにお主は今までの人生では不幸な日々を送っておったが、次の人生ではその分、特典がある。なんでも好きな『能力』を持って、異世界に転移することができるのじゃ」


『能力』……?


 僕には何の取り柄も能力も無かったからなぁ。

 そんなもの貰ったら自分が自分じゃ無くなりそうだぜ。


「能力ってなんでもいいの?」


「ああ、なんでも好きな能力を言うが良い。お主ほど『不幸度』が高い人間なら、大抵の望みは叶えられるぞ」


「ほんとう!? じゃあ元の世界に戻ってみんなに復讐出来る能力を頂戴よ!」


 僕がそう言うと、神様は少し難しい顔になった。


「……分かった。ではお主に『次元操作』の能力を授ける。新しい世界では幸せに生きるが良い」


「……え? 嫌、だから異世界じゃなくて元の世界に行きたいんだけど……うわっ!! 」


 直後、白い光が僕を包む。

 数秒も経たないうちに、僕はその場から消失した。


 ♦︎


「勇者様が召喚なされたぞ!!!」


 気づけば、王宮らしき所の中央にいた。

 目の前には王様っぽい人。

 そして周りにはその従者っぽい人と兵士っぽい人が並んでいた。


「勇者……? それ僕のこと言ってるの……?」


「ああ、そうだ。我が国に伝わる禁断の儀式によってお主を召喚した。これからお主には魔王アレスを討伐してもらう」


 王様っぽい人が答える。


 僕はどうやら異世界転移して勇者になったみたいだ。参ったなぁ……魔王討伐なんてやりたくないよ……。


「今から我が国に伝わる、伝説の勇者の剣を授けよう」


 従者の人がものものしい台を持ってくる。

 上には黒く、錆びれた剣が置いてあった。


「この剣あんまり強そうに見えないんだけど……」


「剣の柄の部分に3つのくぼみがあるだろう。そこに3つの『宝玉』を入れることで剣は真の姿を見せるのだ。まずは『宝玉』を集めることから頑張りなさい」


「うへえ……その宝玉っていうのはどこにあるんだい?」


「知らぬ」


 うへえ……。


「勇者の剣が真の力を発揮したとき、一振りで国一つを滅ぼすほどの威力があると伝えられておるぞ」


「それ、本当!? 」


 そんな剣があったら、世界を滅ぼすことができるじゃん!


「ところで、お主の剣の腕を見たい。その剣で剣技を見せてくれんか? 」


 おっ、ここで神様からもらった力が発揮できるのかな?

 今まであんなに不幸だったんだ。

 レベル99力999知能999くらいのステータスはあるよね!?


 僕は意気揚々と勇者の剣を持つ。


「わっ……とっっと」


 剣を振ろうとしたら結構重かったため、すっ転んでしまった。


「……勇者殿はあまり剣技が得意ではないようだな……。なら魔法はどうだ? 」


 僕に杖が差し出される。


 そうか、僕は魔法特化の勇者だったのか!


 僕は杖を持ち、詠唱する。


「ネラ! ネラミ!! ネラゾーマ!!!」


 発動しない。


「なんだその詠唱は……? お主、魔法も使えないのか? 」


 王様の目が変わる。

 周囲の目が変わる。


 元いた世界の人間と同じ目。

 冷たくて残酷で恐ろしい目。


「どうやら召喚に失敗したようだな……。おい! 『そいつ』をつまみ出せ!!!」


「はっ!!!」


 無理やり腕を掴まれ、体ごと持ち上げられる。

 そして城門前まで連れて行かれ、放り出された。


 兵士は去っていく。

 僕は途方にくれる。


 僕はこの世界からしたら変な格好をしているので町の人たちから奇異の目で見られる。

 それが「あいつら」の目と同じように感じたので僕は走り、町から出て誰も居ない森の中に入った。


 しばらく歩いて僕は木に寄りかかり座る。


 ああ……。異世界でも僕はこうなのか。

 無能で、無価値で、蔑ろにされて。


 神様は一体僕に何をくれたって言うんだ?意味がわからない。確か「次元操作」って言ってたっけ?


 どうでもいいや。僕、なんか疲れたよ。


 足にかけた手に、1匹の蝶が留まる。

 僕はそれをぼうっと眺めた。






 みんな消えればいいのに






 



 ――そう思った瞬間、蝶の羽が閉じられていく。そして全方位から圧縮されるように押しつぶされていき、体、羽がぐちゅぐちゅに潰れていった。


「うわっ……なんだ!?」


 驚いた僕は手を伸ばし、体から離した。

 手に止まっていはずの蝶は死骸も残らず消え去っていた。


 ……なんだこれは?

 まさか僕の「能力」が発動したのか……?


 確か、「みんな消えればいいのに」って思った瞬間、手に止まっていた蝶が潰されていった。まるで、体全体がある一点に収縮されていくように。


 ……もしかして、物を消す能力!?


 僕は立ち上がる。

 そして寄りかかっていた木から少し離れて、その木に向かって念じた。





 消えろ





 しかし、何も起こらなかった。


 あれ?消えない。

 もしかして少し離れているからかな?


 僕は立ち上がり、その木に近付き触れて念じた。




 消えろ



 

 木は全体の幹が、枝が、根が、バキバキと音を立てそうな感じで圧縮されていき、実際には何の物音も出さずに、次第に一点に収束し消えた。




 やっぱりそうだ! 僕は「ものを消す」能力を手に入れたんだ!



 僕はその場周辺で能力を試した。


 ここで分かったことは

 ・この能力は念じれば発動する。

 ・消す対象は触れてないといけない。

 ・触れた場所を中心に物体が収束し、その一点に向かって物理的に圧縮され、消えていく。

 ・大樹も大岩も消せたけど、地球は消せなかった。(地面に触れても地球を触れたことにはならないらしい)



 すごい……!最強じゃないか!

 神様が言ってたことは本当だったんだ!



 でも、腑に落ちない事がある。

 神様は「物を消す能力」とは言わず、「次元操作の能力」と言っていた。

 そして僕は神様に「元の世界に戻って復讐できる能力」と願っていた。


 僕は手をかざす。

 そして自分の元いた世界の、あの忌まわしい「教室」を思い浮かべる。


 ――グォン


 蝶や木を消失させていた時とは違う。

 次元が歪み、空間にブラックホールの様な穴が出現する。


 僕はそこに躊躇なく入った。








「うわっ! ……陰道!? お前、死んだんじゃなかったのか!?」


 僕は花瓶の置かれた自分の席の前に立っていた。

 授業中だったのだろう、先生もクラスの奴らも全員揃っている。


「え? いやあ。死んだけど、みんなにもう一度会いたくて、地獄から蘇ったんだ」


 僕は自分を痛めつけていた主犯格の赤城の机に向かい、目の前に立つ。


「な、なんだよ陰道」


「君は僕がやめてくれって言っても何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も蹴りつけるくらい僕のことが大好きだったよね」


 赤城は僕の異変に気付いたのか恐怖を感じ、椅子ごと倒れる。


「ひっ……」


 僕は赤城に手で触れた。







 消えろ







 念じた瞬間、赤城の体が一点に圧縮されていく。

 骨が折れ、内臓が破裂し、血と肉片が、見えない内壁に叩きつけられる。血も出さず、音も出さず、一点に押し込まれ、塵のようになって消えた。




 それを見ていた教室の奴らは戦慄する。


「先生は僕が何回助けてくれって言っても何もしてくれ無かったよね。終いには『イジメられる方にも原因がある』とか言って僕のことを攻めたよね」


 僕は先生(ゴミ)に触れた。






 消えろ








 流石に異変に気付いたのかゴミ達が席を立ち、逃げ出す。


「「うわああああああああ!!!」」


「「きゃああああああああ!!!」」


 ゴミ達は教卓側の僕から離れた教室後ろの出口に駆け込む。

 僕は能力を使い、出口の前にワープする。


 ゴミ達の前に僕が立ちはだかる。


「やっ……やめれくれっ……!」


「や、やだっ来ないで!!!」




 消えろ









 その教室からゴミは無くなった。






「ただいま! お母さん! お父さん!」


「っ!? 類、お前は死んでくれたはずじゃ……!」


「大好きなお母さん、お父さんを置いて逝けなかったから、地獄の底から帰ってきたよ!」


 僕は涙を流しながら両親を抱擁する。


「今まで育ててくれて『ありがとう』。お父さん、お母さん」






 消えろ







 


 僕を脅かしていたものはこの世界から居なくなった。このままこの世界を滅ぼしたいけど、こんな調子じゃあ時間がかかるなぁ。


 あ、そうだ!


 僕は能力を使い、「異世界」にワープする。





「お前っどうやってここまで入ってきた…!?」


「嫌だなあ、王様。別に普通に入ってきただけだよ」


「兵よ!その痴れ者を囲め!!!」


 周囲を兵士たちが囲む。


 僕は能力を使い、目の前の兵士を消した。


「っ!? 何が起こった!?」


 周囲の兵士が怯んだ隙に再び能力を使い、兵士たちを消していく。


「王様、『こう』なりたくなかったら勇者の剣を僕に頂戴よ」


 僕は逃げ惑う兵士の頭を鷲掴み、それを消しながら言った。


 王とその周囲の従者や兵が怯えながら僕に勇者の剣を差し出す。



「ありがとう。じゃあ消えて」


 僕は能力を使い順々に城のゴミを消していく。






 やがて城からゴミは無くなった。

 少し逃しちゃったけど、まあいいか。


 しかしこの剣重いなぁ。

 元世界の家に後で置いとくか。


 確か宝玉っていうのを3つ集めるんだっけ。

 結構大変そうだなぁ、長い旅になりそうだ。


 そうだこの城のもの全部くすねておこう!

 きっと旅の役にたつぞ!


 僕はこれから始まる異世界の冒険の旅に期待で胸を膨らませる。

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