第8話「君と遺影」

 毎度…馬鹿馬鹿しいお笑いを…

海外出身者のマルコス…つまり、ムツミとムジカの父親は、自らの経済力と科学力を駆使して、ハナシカシステム = 人の精神を取り出し、AIに組み込む事…の開発に成功していた。

 砂漠の中心、人外の土地…そこに演算システムの場…キルギアが存在している。

(その外観は、巨大な倉庫の様で、中には無数のハードディスクで満たされている。今や双子の少女は、そこを司る唯二の存在)

 「お姉ちゃん…アタシ達…どうなったの?」

「そうね…肉体は、失ったのに、生きてる…いえ…そのどちらでもない…」

「怖いよ…ムツミ…」

 「想像するのよ…全ては、ワタシ達の思いのまま…」

「もう…外の世界は…お父様は、いないの?」

そう…マルコスは、死の直前…娘達をキルギアの中に、取り込む事に成功したが、世界の崩壊と共に、消滅した…

 「ムジカ…覚えてるでしょ…もしワタシ達が、危機に陥った時…お父様が、体内に埋め込んだシステムの起動を…」

「ハナシカ…だっけ…」

 「そう…本来は、金儲けのために…作られんだけど…お父様は、ワタシ達のために世界政府を欺いたのよ…」

勝手知ったる、物言いのムツミに対して、猜疑的な妹…

 「キルギアって…何?お姉ちゃん…」

 「そうね…愛…そのものかな…」


(サイド:ムツミ)

 全てを失った…ワタシ達は、世界を想像する事にしたの…

 「ワタシね…ロボットになりたかったの…そうね、殺人ロボで…世界を滅ぼす力を持った…ね…」

「お姉ちゃん…ズルい…アタシも、ロボがいいな…」

「じゃあ…ワタシの妹でさ…そんで、後から作られたからさ…最強の妹64号ってのはどう?ワタシがエヘッって、媚びたキヤラ作るからさ…アンタは、アラアラ…ウフフって、スカした感じでいかない?」

 「ウフフ…お姉様…アタシに勝てると思って?こんな感じかしら…」 

「いいわね…で、後のキャラだけど、やっぱ…ボーイミーツガールは、基本って事で…エレナとディープって、複雑な転生キャラを想像してみたの…こんなイメージ…」

ムジカに、ワタシが想像した物語…レイプされ、殺人者からエルフ…能力者で、母親になる運命のエレナ、ニートからゴブリン…エレナの息子となるディープまでの流れを、直接ムジカの意識に送り込み、説明を省いた…

 「ディープは変態で…エレナは淫乱キャラにしましょ…ねっ、お姉様…ウフフ」

「でもね…娘のテルザだけは、ワタシ達で、守ってあげましょうね…エヘッ…」


(サイド:ディープ)

 何て事だ…やっと最愛のエレナとふたりきりになれたというのに…

 「バーカ…バーカ…ヘンタイ…テルザを探せよ…」

カラダをバラバラにされ…頭だけになった、63号がうるさい…

 「どうやって探す?仮に見つけたとて…お前、ムジカに勝てんのかよ?」

 「策はある…」

 「教えて、ムツミ…私の娘を…テルザを、今すぐにでも…抱きしめてあげたい…」

(うぅっ…やっぱり…エレナは、テルザと僕を、同格にしか…愛してないのか…)

 「自分の事しか考えてない、役立たずのバカはほっといて…ワタシとエレナで奇襲をかけるの…」

(ん、誰の事を言ってるんだろう?まっ、いっか…)

 「そのため…ワタシには肉体が必要…ティセ(電人)システムを再起動させるには、ベースとなる生贄が必要なの…エレナ…ワタシの思考を読み取ってね…エヘッ」

(バカロボが、何を言ってるか…全くわからん…)

その時、63号の頭から…光で出来た、細い管が伸びて、エレナの頭部と繋がる。

 「難しい選択ね…でも…しかないのよね…」

 「ええ…でも心配しないで…ベースとなる人間は、死ぬ訳じゃないから…ただ、ワタシに取り込まれるだけ…」 

 「お…おい…何の話してる?」

頭を抱えて悩むエレナ…少しして、何かを決意する素振りで、僕を抱擁する…

 「また会えて…うれしかった…また、次の世でも…ねっ…」

エレナの、柔らかい唇が重なった時…頭の上から何か、重いものがのしかかる…

ムツミの思考に…支配されて…ん?

 「ピーピーピー…ガーガーガー…63号…再始動…」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る