僕は君が好きで、君は僕が好き。

sekimennbaba

好きな人

 五月十四日

「おはよー!杉谷くん!」

 何故彼女は僕に喋りかけてくるのだろうか?

 僕はこの疑問が高校に入学して一週間が経った今でも尽きる事は無い。

 顔は、イケメンじゃないって自覚はある。

 両親もそれ程お金持ちな訳じゃ無いし、有名人という訳でも無い。

 彼女…花月さんが何で僕に話しかけるのかが一向に理解できない。

 彼女の挨拶に対して、僕自身を口を開ける。

 「おはよう」

 明るい声で楽しげに声を掛けてみようとしてが、イキイキとした喋り方というのはどうにも苦手だ。

 親切には親切を、と母が言っていた。

 もう少し明るく喋れる様になりたい。

 「うん!おはよう!何読んでるの!?」

 小さな放った挨拶に、花月さんは明るく返してくれた。

 そして、いつも彼女は僕の読む本の内容を聞いてくる。

 何が楽しくてそんな事をしているのかは、やっぱり検討がつかない。

 花月さんは、対して女性経験の無い僕からしてもとても美人に見える。

 明るくて、僕みたいなのにも明るく喋り掛けてくれる。

 人懐っこい態度と話し易さは、この教室で群を抜いているだろう。

 でも、花月さんは毎朝僕に話しかける。

 花月さんの友人が、何であんなのと喋るの?なんて言っていたのを聞いていた事がある。

 う〜ん、と暫く言葉を濁した後に花月さんは「楽しいから…かな?」と返していた。

 「皆も喋ってみたら?良い人だよ?」と付け足して。

 その時、僕が横目で見ていたのか、少しだけ僕に視線を向けてくれてウインクをしてくれた。

 嬉しかった。


 五月十五日

 「おはよ!杉谷くん!」

 今日も花月さんは僕に話しかけてくれる。

 来た瞬間に肩を叩かれたのは少し驚いたが、不思議と嫌な気持ちにならない。

 「おはよ」

 今日は少し明るい、親しげな感じで短めに挨拶を送った。

 目線に映る花月さんは、僕の返事に驚いたのか、少し呆けた表情をした後、いつもの明るい笑顔にすぐ戻って挨拶を返してくれた。

 「今日はね、これ読んでるんだ」

 両手に抱えて隠れる様に読んでいた本を見せる。

 「…えっと…大人の女性…手軽な妊娠?」

 うん、この本面白いんだ。花月さん、興味持ってくれるかな?

 花月さんは笑顔のままだったが、少しだけ顔を青くしていた。

 風邪かな?大丈夫かな?

 体調が大丈夫か聞こうとしたが、「面白そうだねー今度読んでみるね」と言って離れて行ってしまった。

 やっぱり体調…悪いのかな?

 もし明日休んでたら、お見舞い行ってあげよう。


 五月十六日

 今日は花月さんは話しかけてくれなかった。

 やっぱり昨日体調を崩したんだろうか、いつもは目がよく合うのに、今日はあまり目があまり合わない。

 今日の本はとっておきだったんだけどな。


 五月十七日

 花月さんは今日も来ない。

 僕何かしちゃったかな?

 昨日本を家まで見せに行ったのがダメだったかな?

 今日は目も逸らしてくれない。


 五月十八日

 やっぱりダメだ。

 花月さんは僕に話しかけてくれない。

 何でだろう?

 やっぱりこういう時は直接謝らないとね。

 お母さんもそう言ってたし。

 友達とか親に見られたら恥ずかしいよね。

 彼氏だって間違えられちゃうかも?

 自然と笑みが口から溢れていた。


 五月二十日

 今日午前、〇〇県〇〇市内にある柳村高校の女子生徒が自宅で傷だらけの状態で気絶しているところを発見されました。発見者は女子高生の両親で、親睦会で遅く帰宅したところを発見されました。女子高生は直ぐに病院へ搬送され、幸い命に別状は無いそうです。

 犯人は依然見つかっておりません。

 

 

 

 

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕は君が好きで、君は僕が好き。 sekimennbaba @sekimennbaba

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ