#1  落ちこぼれニートの俺、死ぬ前にコンビニの店員の乳にふれる。

 君の好きなバストサイズはどれくらいだろうか。


 いきなり、こんな質問をしてすまない。でも、遅かれ早かれ誰かに聞かれるかもしれない。


 まぁ、聞かれないかもしれないけど。


 それはさておき。ほとんどの男達は巨乳と答えると思う。


 あるいは、幼くて可愛い女の子が好きな人は、控えめと答えると思う。


 俺も巨乳は好きだ。けど、はもっと好きだ。


 チョ乳――それは『ちょうどいい乳』。略して、『チョ乳』。


 収まるぐらいといったらいいだろうか。


 手で鷲掴んだ時にピッタリフィットするぐらいのサイズだ。


 今、コンビニの店員の子がまさにそうだ。


 制服から少しばかり盛り上がっている所を見た限り、俺が基準にしている『チョ乳』にドンピシャだと思う。


 ピッピッとエナジードリンクとカップ麺をスキャンしている間、俺は彼女のチョ乳を独占できる。


 深夜だから俺以外誰もいないけど。


 今日はいつもより多めに買ったから、少しだけ長く見る事ができる。


 うーん、見れば見るほど素晴らしい。


 どんどん妄想が膨らんでいく。


 彼女のチョ乳を堪能した後は、それで俺のをマッサージしてもらいたい。


 あぁ、俺がこんな醜い姿でなければ。今頃アタックしていたというのに。


 そんな事を考えていると、チョ乳の店員が「1090円です」と可愛らしい笑みを浮かべていった。


 あぁ、俺の観賞タイムもおしまいか。


 次、小遣いもらえるのはいつになるか分からないから、小銭をゆっくり取り出しながら眺めよう。


 そうしていると、騒がしい声が乱入してきた。


「でさ、その時、俺は……」

「嘘だろ?! ぱねぇな、お前!」


 チラッと自動ドアの方を見てみる。金髪に革のジャケット、銀のネックレスに入れ墨の顔――王道の悪そうな二人組だ。


 こういうのは、あまり関わらないのが吉。


 ササッと小銭を出して、レシートを受け取り、買ったものを持って歩く。


 奴らは、ドリンクのコーナーに向かったから、無事に店を出る事ができた。


 さぁ、とっとと家に帰って、チョ乳を思い浮かべながらマスタープレイでもしよう。


 そう思いながら家路に向かおうとした時。


「てめぇ?! 売れねぇっていうのはどういうことだ?!」


 肩を飛び上がらせるほどの怒号が、背後から聞こえてきた。


 振り返ると、チョ乳の子が悪ども二人組に絡まれていた。


「ですから、身分証の確認をしないと、お酒は……」

「こんな派手な格好してるから、どう見ても大人だろうが!」

「でも……」


 どうやらあいつらは未成年らしい。


 彼女が身分証を見せてくださいと言ったら、逆上したんだな。


 なんて奴らだ。社会のクズだな。


 ニートの俺が言うのもあれだが。


 野郎二人は、やかましくチョ乳の子に文句を言っていた。


 すると、金髪の奴が彼女の腕を掴んだ。


 彼女の顔が恐怖で固まっていた。


「や、やめてください!」

「おいおい、よく見ると可愛いじゃねぇか」


 金髪がニタッと良からぬ事を考えたような笑みを浮かべていた。


 入れ墨の男も同じような顔をしていた。


「酒は別にいいからさ。ちょっと俺達と良い事しようよ」


 奴の手が彼女のチョ乳へと手を伸ばそうとしている。


 そうはさせるか。俺は買ったものを投げ捨て、奴らに向かって突進した。


「うごっ!」

「ぐはっ!」


 奴らはドミノ倒しのように尻餅をついた。

 彼女は何が起きたか分からず、ジッと倒れた二人組を見ていた。


「お嬢さん、大丈夫かい?」


 俺はできるだけ爽やかな声を意識して、チョ乳の店員に声をかけた。


 彼女はギョッとした様子で俺を見た後、

「え、えぇ……」

 と、若干戸惑った様子で返した。


 これでイケメンだったら、間違いなく頬を赤く染めていただろう。


 ちくしょう。生まれ変わるならイケメンかショタに生まれたかった。


 そう嘆いていた時だった。


 ドスッ。


 何だか脇腹がジンジンする。意識がドンドン遠くなっていく。


 チラリと見ると、金髪の男が血走った目で俺を睨んでいた。


「しねぇ……」


 さらに下を見ると、男が何かを握っていた。


 脇腹が赤く染まっていた。


 俺はナイフで刺されたのだ。


 彼女の叫び声が遠のいて聞こえてくる。


 俺はバタリと倒れた。


 すると、野郎二人組は事の事態の大変さに気づいたのか、慌てた様子で逃げていった。


「大丈夫ですか?!」


 彼女の顔が見える。どうやら駆け寄ってくれたらしい。


 あぁ、ドンドン意識が朦朧としてくる。


 これはやばいな。人生の終わりが見えてきた。


 せめてやりたい事をやなねば。


 俺は僅かに残った力を振り絞って、手を伸ばした。


 そして、彼女のチョ乳に触れた。


 あぁ、何と柔らかいのだろう。


「えっ……きゃああああ!!」


 彼女は俺がしている事に気づいたのか、思いっきりビンタした。


 それが俺の人生のチェックメイトになった一撃だった。

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