第25話 古代の真実!ピラミッドに眠るテクノロジーの系譜
「超古代の遺産」が、魔物を生み出し、あるいは制御する「装置」であったという衝撃の事実は、「知の館」の学者たちに大きな動揺を与えた。
「まさか…あの魔物が、神が創造したものではなく、太古の技術の産物だとは…!」
セシャト様は、遺産から金属棒を引き抜かれて機能を停止した魔物と、再び微弱な光を放つ遺産を交互に見つめ、信じられないといった様子で呟いた。
ネフェルも、その場に立ち尽くしていた。
彼の魔法使いとしての常識は、隼人の「カガク」によって、完全に打ち砕かれたのだ。
魔力でもなく、神の力でもない、物理的な法則によって、生物を生み出し、操る技術。
それは、彼の理解を遥かに超えていた。
「ハヤト…貴様の言う『テクノロジー』とは…一体…何なのだ…?」
ネフェルは、隼人に問いかけた。
その声には、もはや傲慢さはなく、純粋な戸惑いと、探求心が滲んでいた。
隼人は、ネフェルやセシャト様、そして集まっていた兵士たちに、この遺産が「古代のテクノロジー」であるという仮説を説明した。
「これは、科学の力で、生命を操作する装置だと思います。この世界の『魔法』とは違う、別の知識体系です」
王都タ・ゼティの最高位の学者と、若き魔法使いに、科学の概念を伝える。
それは、隼人にとって、この世界での「楽園創造」に向けた、大きな一歩だった。
アハメス総司令官にも、この驚くべき事実が報告された。
彼は、遺産が魔物の発生源であることに驚愕しつつも、それによって王都の脅威が解決したことに深く安堵した。
そして、隼人の「カガク」の力と、その真実を見抜く洞察力に、改めて畏敬の念を抱いた。
ファラオにも、この詳細な報告が上がった。
ファラオは、報告を受け、深く瞑目したという。
王都の「怪異」が人為的なものだったという事実に、彼は何を思ったのだろうか。
「超古代の遺産」は、厳重な警備のもと、「知の館」に安置された。
そして、隼人は、セシャト様とネフェルの協力を得て、その遺産の本格的な解析と、失われた「テクノロジー」の解明に全力を注ぐことになった。
遺産の表面に刻まれた螺旋模様は、やはりこの遺産の「設計図」であり、「操作手順」であることが、隼人の解析で徐々に明らかになってきた。
それは、この世界の象形文字とは全く異なる、数学的、物理的な法則に基づいた、緻密な情報伝達の手段だった。
隼人は、現代の記号や数字を使い、その螺旋模様の持つ意味を解読しようと試みた。
ネフェルも、その解析に協力した。
彼は、魔法使いとして、魔力的な波動や、空間の歪みを感じ取る才能があった。
その感覚は、隼人の科学的な測定では捉えきれない、微細な変化を捉える上で、非常に役立った。
「ネフェル、この部分から、何か特定の『波』を感じるか?」
隼人が遺産の一点を指差して尋ねると、ネフェルは集中してそれに触れた。
「ああ…確かに、何か…震えるような…だが、魔力ではない…」
ネフェルの協力は、隼人の解析を飛躍的に進めた。
そして、数週間にわたる解析の末、隼人は一つの仮説に到達した。
この「超古代の遺産」は、生命を創造し、あるいは制御するだけでなく、遠隔地への「転送」や「干渉」を行うための、巨大な「装置」の一部ではないか、と。
この遺産は、王都の地下で偶然発見された、その巨大なシステムの末端に過ぎないのかもしれない。
そして、その巨大なシステムの「本体」がある場所…
隼人の脳裏に、王都の奥にそびえ立つ、巨大な建造物が浮かんだ。
ピラミッドだ。
「セシャト様…この遺産…もしかしたら…『ピラミッド』と…繋がっているのかもしれません…」
隼人は、自分の仮説をセシャト様に伝えた。
セシャト様は、隼人の言葉に驚愕した。
ピラミッドは、彼らにとって、神聖なる王の墓であり、この世界の真理が眠る場所だ。
それに、このような「テクノロジー」が関わっているなど、考えたこともなかった。
「ピラミッドが…装置…?そんな…まさか…」
セシャト様は、信仰と、隼人の提示する科学的な仮説との間で、激しく葛藤した。
だが、隼人の「カガク」は、これまでも彼らの常識を覆してきた。
ネフェルも、隼人の言葉に、ただならぬ真実味を感じていた。
彼は、魔法使いとしての直感で、ピラミッドに秘められた、計り知れない「力」を感じていたのだ。
その力が、魔力なのか、それとも、隼人の言う「テクノロジー」なのかは分からない。
しかし、その存在は、確かなものだった。
ファラオからの命令は、「超古代の遺産」の謎を解き明かすこと。
そして、その謎の答えは、ピラミッドにあるのかもしれない。
隼人の科学者としての探究心は、王都の地下から、今度は王都の象徴であるピラミッドへと向けられた。
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