圧倒的な強さ 助けてもらった命(別視点3)

臨界寸前のような業火が口の中でほとばしり、今にもブレスが放たれそうな状況の中

死を目の前にして何もできない私たち。

そんな私たちとイレギュラーの間に何者かが割って入ってきた。

その瞬間、すべてを焼き尽くすほどの熱を持ったブレスが放たれる。


 私は、その熱気と死ぬことに対する恐怖で思わず目をそらしてしまった。


だが、いつまで経ってもブレスが到達しない。それどころかさっきまで感じていた熱気すらもなくなっていた。


どういうことかと後ろを振り返る。

すると、私たちとレッドドラゴンの間に割り込んできた人の前でブレスが弾かれていた。

まるで、そこだけ空間が歪んでいるかのようだった。


なにが起きているのか分からないでいると、ブレスを防いでいるであろう人がこちらを向く。だいたい170くらいの身長に、フードを被っていて顔全体を覆う狐のお面をつけている。喉仏があるのでおそらく男性。鮮やかな緋色と純白を織り交ぜており所々に金色の刺繍が施されているため人目見て高級かつ高性能だと推測できる着物を着ていて、腰に大小二振りの刀を差している。その刀からは膨大な霊力に加えて魔力とも霊力とも違う別のエネルギーが霊力と同じくらい膨大に存在していることを感じ取った。


私たちの方を振り返った彼は私たちの怪我を確認しているように感じた。確認を終えたように見えた直後、謎の仮面の人物は私たちに手をかざして何か呟いた。その瞬間、あれほど重症だった私たちの傷が何事もなかったかのように元通りになっていた。しかも、もうすでに無いに等しかったHPもMAXまで回復していた。そのことにテンジョウとミズハも気づいたのかとても驚いている様子だった。これほどの治癒能力を持っている人なんて知っている中では日本に2人しかいない。


そんなことを考えているうちにブレスの勢いが徐々に弱くなっていき、私たちを焼き尽くすはずだった業火のブレスは目の前にいる謎の人物によって完全に防がれてしまった。


ブレスをすべて弾かれたことに苛立ちを覚えたのかよりやつは咆哮とともにより一層禍々しい魔力を立ちのぼらせる。

それに対して青年は二振りの刀のうち鮮やかに輝くほど美しい天色あまいろをした長い刀に手をかけ居合の構えを取る。


イレギュラー個体と謎の青年がにらみ合い、ともに動かず様子を伺う。

先に動いたのはイレギュラー個体の方だった。私の右腕を吹き飛ばした尻尾を縮めた後に一気に伸ばす神速の尻尾突き刺しを繰り出す。

 突き刺さってしまう。そう思った矢先、謎の人物が一瞬視界から姿を消した。

次の瞬間、イレギュラーの尻尾が切り飛ばされる。そこには謎の青年が刀を抜いた状態で立っていた。あの一瞬で奴の尻尾突き刺しをも上回る速度で身を屈めて回避。そして、刀を抜刀し切断… 到底信じられないが、目の前の状況がそうであると物語っている。


 尻尾を切断されたイレギュラードラゴンは己の尻尾を斬りこっちを見つめている謎の人物に対して恐れを抱いている。私たちと戦っていたときには見せなかった怯え・恐怖を。それらの感情がイレギュラーの一つひとつの行動に滲み出ていた。狩る側だった自分が狩られる側となって初めて感じたであろう死に対する本能的な所からくる恐怖。


謎の人物は怯んでいるのを好機と見たのか一瞬で奴の懐に潜り込む。

そのまま彼の頭上にあるイレギュラー個体の首を切った。


その決着はあまりに呆気なかった。あれほど絶望的な状況だったのをたった一人の謎の人物が圧倒的な力でイレギュラー個体のレッドドラゴンを倒し、私たちを助けてくれた。


切り離した首が地面に落ち、イレギュラーの肉体が霧散する。そして、そこにはイレギュラーレッドドラゴンの素材が数多くドロップしていた。私たちも少しの素材と膨大な経験値を獲得する。


私たちは助けてくれたお礼をしようと彼に近づくのだが。彼の姿が刹那の間にどこかへと消えていった。


『えっ… 何が起きたの?』 『助かったのか……』

『あの仮面の人がイレギュラー個体を倒して助けたってところか… やばすぎ』

『あの仮面の人物はいったい誰なんだ?』 『実力を隠してた感じかな~』

『少なくとも日本にあのイレギュラー個体を単独でなおかつ余裕をもって倒せる人はいないぞ』  『これはあれだな。解析・特定班‼ 頼んだ!』 『承知。既に始めている』


まだドローンが動いており、配信が続いているということにこの段階でやっと気づいた。

おこった出来事すべて見られていた。チャット欄も謎の仮面の人物についての考察が始まっており、解析・特定班の人も動き出している。

こうなってしまっては私たちではもう手が付けられない。

 ・

 ・

 ・

その後、私たちは既に色々終わったダン協のレスキュー部隊に保護され最も近い帰還用ポータルから地上へと帰還した。そこからはダン協による強制的な事情聴取、記者からの質問攻め、事務所に帰ってからの報告などが行われ帰宅できたのは深夜近くだった。


くたくただったのですぐさまシャワーを浴びた。

(あの助けてくれた仮面の人…  いったい誰なんだろう

あれほどの実力を持っているのに誰も知らなかった… 今まで実力を隠して探索を行っていたのかもしれない……  もしそうだったらせっかく助けてもらったのに申し訳ないことをしたな~  またどこかで会えたならお礼をして実力を露見させてしまったことを謝っとこう。)


 そんなことを思っているうちにシャワーを浴び終え、歯磨きなどをしたのちにベッドにダイブする。そのまま今日起こったことを振り返りながら深い眠りへと落ちていった。






あとがき

読んでいただきありがとうございます。

よければ作品コメント、応援。★評価して頂けると嬉しいです。

今回の話で別視点の話が終わりました。

いやぁ~ 長かったすね(笑) 当初はこんな長引くとは思ってなかったw

主人公視点で書けてなかった描写などを別視点で補足したりしました。

次回からは主人公視点に戻ります。2話の続きからです。

では、また次のお話でお会いしましょう。さらば‼





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る