ずっとそばにいたかった

やってみる

第1話

「ことりちゃん、私シューカツするよ」

(シューカツ?)

「うん!シューカツ」


その日から友達は行動的になった。


しばらく元気がなかった。私をぼんやりと見つめるだけで話しかける事もなかったから、心配してたんだ。


「やる事リストも作ったよ」

(すごいね)

「あとはこの通りやるだけ!」

(元気になって安心したよ)


まずは部屋の片付けをして、可燃や不燃に分別。粗大ゴミの申込。

フリーマーケットに参加したり。

ネットで不用品を販売したり。

珍しく他の友達を部屋によんで、プレゼントをあげたり。


(大事にしてたものじゃないの)

「私の代わりに大事にしてくれる人に渡ればいいんだ」

「私には、ことりちゃんがいればいいし」

(うふふ)


今まで私にしか見せてなかった小説を投稿したり。

たまに熱心にネット検索をしたり。



ある低気圧の通過する夜、友達は泣いているようだった。私は何もできずに聞いているだけ。


次の日の朝、昨夜の風雨で積もったゴミが流され空も植物も明瞭に見える。明るく光に満ちてる。

ほとんど何も無くなった部屋で、コンビニのおにぎりを食べる。遅めの朝食。

「またゴミがでちゃうね」

ゴミをまとめて、カバンにしまうと友達は優しい笑顔になった。

「ことりちゃん。今日だよ。今日」

窓からの日差しが床に反射している。

「シューカツもほぼ完了」

友達は立ち上がると、小さなカバンを一つ身につけた。


「さぁ行こう!」

(一緒に出かけるの?嬉しい!)








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る