(26)アヤミという人

 夕方、アズサとヨウスケが実家に帰宅すると、母が出迎えた。

 

 「おかえり。どうやった?」

 

 アヤミのことを母が聞く。

 

 「うん、元気やったよ。いろいろ話した」

 

 「オレも、仲良うしてもらった」

 

 「よかったね。そんなにええ娘さんなら、ワタシも一度会うてみたいわ」

 

 「お母さんも気に入る思うよ。というか、ノリがお母さんと一緒」

 

 「せや。オレ、スーパーの入り口で大声で名前呼ばれたん、お母さん以来や」

 

 「なんやのそれ? アズサ、アヤミさんにはよろしう伝えとってね」

 

 「わかった。アヤミさん、市内やし、いつでも会えるよ。お母さんのこと話したら、向こうから来るかもしれん。ハハハ」

 

 アズサは、アヤミを母にも大いに会わせたい気がしていたが、アヤミに母のことを話せば、本当に一人でこの家に来るかもしれないと考えて、そういう話をするタイミングはちょっとよく考えておこう、と思った。

 

 しばらくすると、近所のゴルフ練習場に行っていた父が戻って来た。アズサとヨウスケを見ると、

 

 「おお、アヤミさん、どやった?」

 

と、母と全く同じことを聞く。アズサもヨウスケも、母に答えたのと全く同じことを答えてみた。

 

 「そうか。もしアヤミさんが良ければ、お父さんお母さん、いつでも待ってますて伝えたらええ」

 

 アズサとヨウスケはアヤミのことを姉のように思い始めていたが、父もなんだか、アヤミを娘のように感じ始めているのかもしれない。いずれにしても、大食い優勝、難関校入学、文学賞受賞、というイメージからは全く離れた、明るい、どこにでもいる、ちょっと寂しがりの二十代の女性、ということが分かっただけでも、アズサはなんとなくほっとするものがあった。

 

 土曜の夜は、また一家四人で夕食を取り、その後はアズサもヨウスケも、久しぶりに実家の自分の部屋で眠った。翌日の日曜日は、ヨウスケは朝食を取った後、午前中に家を出て山梨の自宅に帰って行った。アズサは、午前中はリビングでゆっくりしていたが、午後は実家の自分の部屋で、アヤミとの打ち合わせの整理や、明日の比叡山での取材の準備を行っていた。

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