第48話 ミズホとエリーの情報収集
私たちはルアナを助ける手がかりを探すために、まずは情報収集――ってことで、冒険者ギルドへ行ってみることにした。
「こういうときはギルドでしょ!」って、なんとなくそんな気がしただけなんだけど。まあ、異界でも“冒険者ギルド=情報集まる場所”ってイメージは鉄板だし、間違ってはいない……はず。
それに、ここに来るのは元々の予定だった。
だから、多少の緊張はあっても足取りは軽い。きっと、何か見つかる。そう信じていた。
そして辿り着いたのが――冒険者ギルド・ミドリーノシティ支部。
中に入ると、手前は広めの休憩スペース。木製のテーブルがいくつも並び、奥には受付カウンターが見える。
……けど、人がいない。あれ、想像してたより寂しい光景。
唯一いたのは、カウンターの奥で頬杖をつきながらうたた寝している、年上っぽいお姉さんひとりだけだった。
「ふぁぁ……ん? お客さん?」
寝ぼけまなこのまま、彼女は顔を上げた。
「ここは冒険者ギルド、ミドリーノシティ支部よ。見ての通り、仕事なんてないけどねー」
あはは……開口一番それ? まあ、確かに暇そうではあったけど。
「えっと、私たち、こういう者で――」
そう言って、私は懐から推薦状を取り出して見せた。
「へぇ、ルーサーさんの紹介? なるほどねぇ。あの人、相変わらず面倒見いいわね」
お姉さんは手紙を読んで、少しだけ目を細めた。
「でも、よくここまで来れたわね。ホーリーライトの兵士たちが検問してるはずだけど?」
「ま、まあ、そこは……いろいろ手を使って……というか、賄賂で……」
「あはは、あの連中、金に弱いもんね。ま、私としては誰であれ歓迎するわ。自己紹介がまだだったね。私はルーシー。ミズホちゃんとエリンちゃん、よろしくね」
良かった、話のわかる人で。
ルーシーさんは気さくで、どこか姉御肌っぽい感じがした。
「ただね……さっきも言ったけど、お仕事はほとんどないのよ」
「それって、もしかして……」
「察しがいいわね。ホーリーライトの兵士たちが、裏でギルドを妨害してるの。依頼人が怖がって、誰も来なくなっちゃったのよ」
ルーシーさんの表情が、ほんの少し険しくなる。
「まったく……あの連中、街を支配してる気でいるのよ。誰か何とかしてくれないかしら……」
その時、ルーシーさんがちらっとこちらを見た。
……もしかして、今がチャンス?
私は意を決して、ルアナのことを話した。
「ルアナちゃんが……捕まったの!?」
ルーシーさんの声が一気に大きくなった。
「えっ、ルアナのこと知ってるんですか?」
「もちろん! あの子は、この街の数少ない希望よ。ホーリーライトの連中に正面から物申せる、勇敢な子だった。街の人たちは皆、彼女のことをヒーローみたいに思ってるの」
そう言って、ルーシーさんは握り拳を作った。
「でも……捕まったなんて、信じられないわね」
「なんか、指揮官が変わったって聞いたんですけど……リーファって人、知ってますか?」
私がそう言うと、ルーシーさんの顔色が一気に曇った。
「うげっ……リーファ大尉が出てきたの? それは最悪ね」
「そんなにヤバい人なんですか?」
エリーが眉をひそめる。
「うん、あの人はね、冷酷そのもの。ルールに反する者には一切容赦しないし、目的のためなら手段を選ばない。前の指揮官よりずっと厄介よ。しかも、有能なのがまたタチ悪いの」
私は思わず小さく唸った。
「うわぁ……効率主義タイプ。私、そういう人ほんと苦手なんだよね……」
「ミズホ、あなたらしい意見ね」
エリーがくすっと笑う。
でも、笑っていられる状況じゃない。
ルアナを助けるには、敵の本拠地に踏み込まなきゃいけない。
けど、相手は冷酷な軍人で、正面突破なんてまず無理。
――どうする、ミズホ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます