第46話 ミズホと賭ける可能性

ルアナが連れて行かれて、ホーリーライトの連中が引き上げた後、村はもう阿鼻叫喚だった。

「ルアナさんを助けるぞ!」と怒号が飛べば、すかさず「待て!無謀に突っ込んだら全滅だ!」って声も返る。皆の顔が疲れてて、悔しさと恐怖がごちゃ混ぜになってるのが見て取れた。助けたいのに力が足りない――そのジレンマで村中が重く沈んでいた。


私も胸がねじ切れそうに悔しかった。戦う力はあるのに、あの場で突っ込んでたら村が丸ごと戦場になってただろう。エリーが横で小声で言う。

「ミズホ、あの判断は間違ってない。私たちが飛び出してたら、村ごと巻き込まれてた」

うん、分かってる。でも分かってるから余計にムズムズする。正しいこととしたいことは、いつだって別物なんだよ!


そこで、リーファの言葉がポンと頭に転がり込んだ。「ここにはルアナ以外にまともに戦える者はいない」――ってことは、私やエリーのことは向こうは知らないってこと?ピンと来た瞬間、胸の奥で小さな火花が弾けた。チャンス、あるかも!


勢いで前に出て、大声で呼びかけた。

「ねえ!向こうは私たちのことを知らないんだよ!そこを突けばルアナを助ける方法、絶対見つかるって!」

最初は不安そうな顔ばかり。「でも、知り合ったばかりの君たちに任せるのは…」って。正直、保守的すぎて私、ちょっとイラッと来た。


「何のためにここに集まったのよ!?」とつい熱が入る。指摘してやった。

「ホーリーライトに立ち向かうためでしょ?ルアナは自分の道を信じて突き進んでる子よ。会ってまだ日が浅くても、あの子がどれだけ本気かは分かる!あの子がいなきゃここまで抵抗できなかったんでしょ?なら、その抵抗をもっと育てればいい。戦う力なんて今からだって身につけられる!可能性を潰すな!ルアナを見捨てるのは、未来の希望を捨てるのと同じなんだよ!」


あ、言い過ぎたかな…と一瞬青ざめる。エリー、また私が暴走してない?牢屋行きフラグ立ってない?とビクビクしたけど、すぐに兵士の一人が前に出て言った。

「嬢ちゃんの言う通りだ。俺たちはルアナさんに頼り切ってた。だが、このままじゃ何も変わらない。俺は嬢ちゃん達の案に乗る」


その一声で空気が変わった。ぽつりぽつりと賛同の声が上がり、顔つきが変わっていく。泣きそうだった目がぎゅっと引き締まり、小さな覚悟が生まれるのが分かった。村全体が、静かにだが確実に動き始める瞬間だった。


胸の中が熱くなって、私は拳を握りしめた。怖さもある。だけど、今動かなきゃ何も変わらない。私は声を張った。

「よし!ルアナを助けるための作戦を立てるぞ!行くぞ、みんなー!」


「イエス、マム!」と返事が返った瞬間、夜の村に小さな希望の火が灯るのを感じた。燃える匂いが鼻を刺すけど、その匂いすら今日は戦いの合図みたいに聞こえる。ルアナを連れ戻す。そのために今、私たちは動き出す。

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