第28話 狼人族エル (ゴトー編3)
(ゴトー編3)
(前話27話 「シンエイ・クジョウ」から3時間前)
朝。雑木林。朝食後。
ゴトーは少女のメイバージョンに変化中。
シーナ。
仔龍のリュウノスケ。
従魔の魔獣トラキチ、ケルロー、スイスイが、
真剣にスマホの動画を観入っている。
――
○すかう
(察して検索を)
おっさんボートでへいこらほー♪
HEY!HEY!HEY!HEY!
もすかーもすかー夢見るあんでぃさん♪
――――――♪
――
「………」 『『『『……』』』』
動画の音楽が終わる。
茫然のシーナ、魔獣たち。
「…ゴトーよ」
「何だ」
「これが、ゴトーの一推しか?」
「うむ。自信作だ」
「なんじゃこの意味不明な歌は?リュウノスケも獣魔も目が点じゃぞ」
『『『『……』』』』 <ポカーン>
「さすがにこの世界では厳しかったか・・・」
「「らぴゅた」のメガネが出た時は、おっと思ったが、全てが意味分からんかったのじゃ」
「もう1本ある」
「…もう1本?」
――
○すかうを目指○んだもん
(察して検索を)
――
動画の音楽が終わる。
「………」『『『『……』』』』 <ポカーン>
「ミック並みに
『キュピー』 ↓ リュウノスケ
『あるじ、みくの方がいい!』 スイスイ
「じゃよな!ミックの方がええよな!」
『私は「ニコニコくみきょく」が好みだな』 トラキチ
「おー! それもええよな。あれはもう音楽の革命じゃな」
『キュピー♪』 ↑
『「よあそび」の「あいどる」も捨てがたいな』 ケルロー
「お、ええとこつくのう」
『キュピピピピー』 ↑
ケルローが風上から流れる匂いを嗅ぐ。
『 <クンクン> これは!』
「ん? 魔物でも近づいとるか?」
ケルロー、トラキチは森の先へと疾走する。
「なんか現れたんかのう?」
「・・・・・」
3分後。
「もすかーもすか~♪、 はっ!無意識に!
メッチャ耳にこびりついて、口ずさんでしまうのじゃ!」
『シーナもか! オレ様の頭にも響き回っている』
「恐るべき、チキュウの歌…」
『こりゃもう呪いだろう!』
「お? ケルローに誰か乗ってるぞ」
フードを被った子供がケルローに跨りこちらに向かってくる。
「誰じゃ? おい、魔獣がワッチら以外に懐くもんなんか?」
「主従してる俺の許可なしでは懐かないはずだ」
『驚いたぞ、まさかこんなとこに居るとは』
『エルちゃんだぜ!』
「あ!シューティング・スターの、
確か、エルメダじゃったか?」
――
別作品
第22話 「テラウスの冒険者」 参照
パーティー名「シューティング・スター」
シュバルツ 剣士 LV60 男21歳(リーダー)
狼人族(半獣人)Aランク下位
ガルツ タンク LV56 男20歳(脳筋)
狼人族(半獣人)Bランク中位
チエコ 魔術師 LV55 女22歳(常識人)
猫人族(半獣人)Bランク中位
サミン 狩人 LV52 女24歳(婚活女)
兎人族(半獣人)Bランク下位
エルメダ 狩人 LV55 女9歳(無口) ←←←
狼人族(半獣人)Bランク中位
――
「シーナ、久しぶりなの。
ケルロー、トラキチとバッタリ会ったの」
「なしてここに? リーチェ領へ行ったんじゃなかったんか?
まさかワッチらを追って?」
「会ったのは偶然なの。会えればいいとは思ってたけど」
「他のメンバーはどうしたのじゃ?」
「我1人だけなの」
「おいおい、なんて無謀な」
エルメダはメイ・バージョンのゴトーを見る。
「この女はだれなの? ゴトーはどこにいるの?」
「ゴ、ゴトーか…」
シーナは困惑してゴトーを見ると、
「俺がゴトーだ」
「……?」
「信じられんが、これがゴトーなのじゃ」
「???」
「さすがにこの姿じゃ信じてくれんぞ」
ゴトーはローブ、服を脱ぎ出す。
「何で服を脱いでるの? 痴女なの?」
ネコちゃんパンツ一丁になる。
「我にはそんな趣味ないの。シーナの趣味なら他でヤッテくるの」
「ワッチにはそんな趣味ないわ!」
「戻れ!」
元のゴトーの姿に変化する。
パン1のゴトー。
「!」
『キュピピピ―』 ↑
『久しぶりのあるじのご尊顔だ!』
『相変らずモッコリしてるぜ!』
『『『アニキー!』』』
「お、驚いたの……」
ゴトーは天狗の面を股間に装着。
「どうして面を付けるの?」
「あー、まあ幼女の手前で、紳士の嗜みかのう?」
「……」
『キュッピピピィ♪』
リュウノスケが天狗の鼻に飛び込む。
「ウッ!」
「こらっ、リュウノスケ! エルの前で暴発したら事になるじゃろうが!」
シーナはリュウノスケを抑え込む。
『キュッピィ』 ↓
「エルメダ、この魔物が巣食う危険な時期に子供の一人旅とはどういう了見だ」
「え? その格好で問うんか?説得力0だぞい」
「いろいろ訳があるの」
「シューティング・スターの面々は止めなかったんか?」
「止められたの。無理を言って抜けてきたの」
「マズイじゃろうが。今は魔王復活で魔物が活発化しておるのは知っとるじゃろ」
「経緯を説明してもらおう」
「リーチェ領地に帰る前に「リキズイ」に寄ったの」
「リキズイ言うたら、神龍の聖地の街か」
「街で買い物や情報収集してたの。
そして我が欲しかった情報を手に入れたの」
「情報とは?」
「我は父を探しているの」
「そ、そうか。父親捜しか…」
「テオタビの街で、父は姉2人と住んでるらしいの」
「身内探しか…。それはどうしても行かんといけんのか?」
「2年前の話なの。
我の育ての祖父母が2年前に亡くなって、
身内のない我は父を頼ることにしたの。
父の故郷に向かう途中、妹のオルメダと奴隷商に捕まってしまったの。
病気がちのオルは馬車の中で死んで、悲しくて、悔しくて、
隙を見て我は奴隷商を皆殺ししたの。
けど深手を負って、動けない我はここでオルと一緒に死のうと決意したの。
その時、シューティング・スターに助けてもらったの」
「そうか。お前さんも苦労したんじゃの…」
「それからシューティング・スターのパーティに入れてもらったの。
2年前、依頼で父の故郷の近くを通って、立ち寄ったけどいなかったの。
父方の祖父母は死んで、父が姉2人を引き取ったらしいの。
この2年、父の情報を得る為、お金を貯めてたの。
我にはもう父しかいないの。
会ったことはないけど、姉2人にも会いたいの」
「なるほど、エルの気持ちも分かるのう…」
「今の話を聞くに、両親は子供を育てないのか?」
「狼人族の掟かのう? 確か狼人は姉妹が分かれて別々の祖父母側に育てられるんじゃったな。
成人にすれば父母が迎えにきて、祖父母が成人前に死んだ場合、迎えに来るとかじゃったか?」
「そうなの。我の所は母方で、母が来るの。
けど母は我が物心つく前から行方不明なの。多分死んでるの…」
「何年も姿を現さないなら、そういうことじゃの」
「事情は把握した。
しかし一人旅は関心はしないな。まだ幼子、限界もある」
「いままでのLVならそんな無茶しないの。
リキズイの大聖堂である事が起こって決心できたの」
「ある事?」
「チエコが大聖堂に寄付するから寄ろうとしたら、
その時、僧侶の男に声を掛けられたの。男はゴンダラフって言ってたの」
「ゴンダラフ、だと」
「エルよ、それは「ゲンダラフ」神龍の間違いじゃないんか?」
「ゴンダラフって言ってたの」
「「ダラフ」は神龍の世代ごとに引き継がれるものじゃ。
今は神龍「ゲンダラフ」じゃが、ゴンダラフに神が変わったんか?
いや、そもそも神がこの地に現れること自体あり得んことじゃが」
「とても神には見えなかったの。
青い服で教会の人に雑用させられていたの」
「教会の人間が? じゃあ同じ名で神とは関係ない奴?
さすがにダラフ付けは不敬じゃろ」
「スキル[絵心]」
ゴトーはノートに似顔絵を描く。
若い男の絵。頭には龍の冠。
「この男だったか?」
「そうなの」
「龍の冠? これ、神の証じゃないんか?」
「冠はなかったの」
「俺が魔王討伐の依頼を受けた男だ。
次期神候補。現神の「ゲンダラフ」の代理と言っていた」
「神ってワッチらと同じ姿なんじゃな、随分若いのう」
「超フランクな神だった」
「候補が何故、教会の下っ端やらされているんじゃ?」
「その男は、神の力の恩寵はいらないかって我たちに聞いてきたの」
「恩寵?」
「目が血走って恐かったの。
皆、無視したけど、ガルツが「覚醒」してくれるのかと冗談を言ったの。
杖で頭を叩いたら、耳と尻尾が生えたの」
「は?」
「我も」
エルメダはフードを取る。
頭の上にケモ耳。
「「!!!」」
――
28 狼人族エル (ゴトー編3) 終わり (78)
29 再びテオタビの街へ (ゴトー編4) (79)
――
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