第19話 工房建設に向けて ①
トンボ玉のデモンストレーションが終わると、ザックおじさんはロルフ、モルゲン、そしてジュンナを連れて、村長宅の一室へと向かいました。エイモンドも、ジュンナの技術への興味から、その場に加わることを許されました。
部屋の中央には、村の地図が広げられていました。ザックおじさんが、地図上のいくつかの場所を指し示す。「さて、ジュンナ。お前が事前に考えてくれた工房の候補地について、皆に説明してくれないか?」
ジュンナは、少し緊張しながらも、自分が考えた候補地の利点と欠点を説明し始めました。水利の良さ、燃料となる森への近さ、資材運搬のしやすさ、そして将来的な拡張性。前世の知識を活かし、彼女は具体的な改善点や、効率的な作業動線まで提案しました。
ロルフは、ジュンナの説明に感心したように頷きました。「なるほど、これほど詳細に検討されているとは。特に、将来的な拡張性まで見据えているとは、素晴らしい着眼点ですな」
モルゲンも、腕を組みながら興味深そうに話を聞いていました。「君の知識は、我々の想像をはるかに超えている。このガラス工房は、単なる鏡の生産に留まらず、様々なガラス製品を生み出す可能性を秘めている。例えば、保存容器や窓ガラス、あるいは装飾品など、需要は無限大だ」モルゲンの言葉に、ジュンナの胸は高鳴りました。
ロルフは、地図を指しながら現実的な問題提起をしました。「建設費用、資材の調達、そして何より、熟練した職人の確保が課題となりますな。特に、これほどの規模の炉を建設するには、専門の技術者も必要となるでしょう」
ザックおじさんが、ロルフの言葉に頷きました。「その点については、私も街で手配を進めている。だが、ジュンナの知識と技術が、我々の計画を大きく前進させることは間違いない」
エイモンドは、ジュンナの提案に熱心に耳を傾け、時折メモを取っていました。「ジュンナ殿の知識は、まさに目から鱗です。もしよろしければ、工房の建設が始まった際には、私もジュンナ殿の元で、その技術を学ばせていただきたいのですが……」
エイモンドの申し出に、ジュンナは少し驚きましたが、すぐに笑顔で頷きました。「もちろん!私で良ければ、いつでも!」
エイモンドは、ジュンナの快諾に顔を輝かせ、さらに続きました。
「ありがとうございます、ジュンナ殿!実は、もしそれが叶うのであれば、街にいる私の家族も、しばらくこの村に呼び寄せたいと考えているのですが……。ガラス製作の技術を学ぶには、腰を据えて取り組む必要がある。家族がそばにいれば、私も安心して、より深く技術を習得できるかと」
エイモンドの真剣な眼差しに、ジュンナは再び驚きを隠せませんでした。彼がそれほどまでに、ガラス製作の技術に魅せられているとは。ザックおじさんも、エイモンドの熱意に感心したように頷いていました。
「エイモンド殿がそこまで言うのであれば、改めて村長に相談してみよう。村の空き家をもう一軒、修繕できるか、あるいは村の者で受け入れられる家がないか、掛け合ってみる価値はあるだろう」ザックおじさんがそう言うと、エイモンドは深々と頭を下げました。
議論は白熱し、工房の具体的な設計図の検討も始まりました。ジュンナのアイデアは惜しみなく採用されていきます。彼女の目の前には、ガラス工房の完成、そしてその先にある、この世界の明るい未来が広がっているように見えました。ロルフたちはこの後、ジュンナの提案した条件に合う土地を探し始めるでしょう。
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