第7話 小さ煌めき -トンボ玉作りに挑戦-
「ありがとうございます、ファーゴさん!」
ジュンナは輝く目で「工芸スキル」の
それは手のひらに収まるほどの、なめらかな黒い石だった。かすかに温かいような気がする。
「まさか、こんな貴重なものを……」
ローラも驚きを隠せない様子で、ファーゴに頭を下げた。
「いやいや、命の恩人に比べれば、これくらいどうってことないさ。それに、お嬢ちゃんが本当にガラスというものを作り出せたら、それはこの世界にとって、とてつもない発見になるだろう。私も、その暁にはぜひ実物を見てみたいものだ」
ファーゴはにこやかにそう言うと、再び深々と頭を下げた。
「無理をなさらないでくださいね。解毒薬の効果が安定するまで、もう少し休んでからにしてください」
ローラの言葉に、ファーゴは素直に従い、部屋の一角で横になった。
ファーゴが休んでいる間、ジュンナは手に持った
「ジュンナ、無理はしないようにね」
ローラが心配そうに声をかける。
「うん、大丈夫!でも、早く試してみたい!」
ジュンナは興奮を抑えきれない様子で、エレナを肩に乗せたまま、自室へと駆け込んだ。
部屋に戻ると、ジュンナはすぐにベッドに座り、
すると、
「これは……!」ジュンナは目を見開いた。
ガラスはこの世界では古代の文献に、ごくわずかではあるがその存在が記されていることが示された。しかし、その製法は途絶えてしまい、現在は「失われた技術」とされていたのだ。
そして、最も重要なこと。ガラスの主原料は、珪砂(けいさ)と呼ばれる特殊な砂であること。そして、その珪砂が、アインツ村の近くにある「きらめきの小道」と呼ばれる場所で採れる可能性があることが示唆されたのだ。
「きらめきの小道……そこか!」
ジュンナは、頭の中に流れ込んできた情報に興奮を隠せないまま、エレナを抱きしめた。ガラスの原料である珪砂(けいさ)が、子供たちもよく遊びに行く小道で見つかるかもしれない。危険な洞窟ではなく、身近な場所だと知り、ジュンナの心は軽くなった。
しかし、すぐに現実的な問題が頭をよぎった。ガラスを作るには、高温の炉が必要だと情報は示していた。だが、いきなり大掛かりな炉を作るのは無理だ。まずは、もっと手軽なものから始めるべきではないか?
「そうだ!トンボ玉だ!」
ジュンナは閃いた。前世の知識で、トンボ玉は比較的シンプルな道具で作れることを思い出したのだ。小さなガラス玉なら、本格的な炉がなくても、家庭用の火に近い環境でも作れる可能性がある。
ジュナは、頭の中の「工芸スキル」で得た情報と、前世の知識を組み合わせ、トンボ玉作りのための簡易的な設備を構想し始めた。
必要なのは、
* 熱源: 高温が必要だが、まずは小さく、火力が安定しているものがいい。村の鍛冶屋の炉の片隅を借りるか、自宅の暖炉を工夫するか。
* 道具: ガラスを巻き取るための金属棒。これは、ザックおじさんに頼めば何とかしてくれるだろう。ガラスを成形するためのピンセットのような道具も必要になりそうだ。
* 材料: もちろん、珪砂。そして、ガラスを溶けやすくするためのソーダ灰や、色を付けるための少量の鉱物。これらは、ファーゴさんのような行商人に聞けば手に入るかもしれない。
興奮冷めやらぬまま、ジュンナはローラの元へ向かった。
「お母さん!お母さん!」
「どうしたの、ジュンナ?そんなに慌てて」
ローラはファーゴの様子を見ながら、心配そうにジュンナを迎えた。
「あのね、ガラスの材料が見つかったかもしれないの!あと、作り方も少しだけ!」
ジュンナはスキルで得た情報を、興奮気味にローラに説明した。きらめきの小道の砂が原料になること、そして、まずは小さなトンボ玉から作ってみたいこと。
ローラは驚きながらも、ジュンナの話を真剣に聞いてくれた。
「きらめきの小道の砂がね……。確かに、あそこの砂は普通の砂とは少し違う、キラキラした砂があるわね。でも、ガラスを作るなんて、本当にできるのかしら?」
ローラは懐疑的ながらも、ジュンナの瞳に宿る真剣な光を見て、その情熱を理解しようとしてくれた。
「うん!まずは小さなトンボ玉からなら、できると思うの。鍛冶屋さんの炉を少し使わせてもらえないかな?あと、金属の棒とか、ピンセットみたいなものも欲しいんだけど……」
ジュンナは、具体的な協力を仰いだ。
ローラは少し考え込むと、優しい表情で言った。
「そうね、まずはザックおじさんに相談してみましょう。彼なら、炉のことも、道具のことも、色々と知っているはずだから。でも、危ないことは絶対にしないと約束してちょうだいね」
「うん!ありがとう、お母さん!」
ジュンナは、力強く頷いた。新たな目標に向かって、一歩を踏み出した瞬間だった。
ジュンナは、まずトンボ玉を作るための簡易的な設備を整えることを目標にしました。
「よし!」ジュンナは小さく拳を握りしめた。これからは、具体的な目標に向かって進むだけだ。
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