第4話 エルフでも首を垂れる逸材


「そんなにジロジロと私の尻を見るな、照れるではないか」


あははは、これは否定が出来ない。

杖よりもどうしてだか、あのお尻のプリプリ感に目を奪われていたのだから。


「いや、えと……後ろに瞳でも付いていらっしゃるのですか先生?」


「ん? いや、そんなのはついとらんぞ。そんな物が有ったら私は化け物ではないか。っと、まあ有れば便利ではあるのだがな」


突然彼女は攻撃の手を止めると、空中で静止したまま此方へと振り返った。

そしてなんのアクションもないまま私の方へ飛んで来たので驚いた。


「えっ、えっ、攻撃を解除してこっちに来られて大丈夫なのですか?」


「ああ、大丈夫大丈夫。今日はこれで暫く来ないはずじゃ。対岸と言っても、魔島からここ迄来るのに相当な距離がある。それに魔物も無限じゃないからのお。見ての通りじゃ」


確かに、視界には入ってはいるけれど、結構な距離に魔島はあるようだ。

きっと実際の距離よりも近くに感じるのは、それだけあの島が大きいからに違いない。


地図で見たよりも遥かに大きい。


「あっ、本当ですね。知らない間にもう魔物が何処にも居ない」


「お主は目が悪いのか?」


「えっと、どうしてですか?」


「いや、その距離なら魔物がおらんのはスグに分かるじゃろうて」


「すいません、ちょっと考え事をしていて、気付きませんでした」


「そうか」


いや、本当は気付かなかったんじゃない。あの弾力のあるお尻に目を奪われていたのだ。だから、すっかり彼女の戦闘を見ていなかった。


女の私でも鷲掴みしてしまいたくなるほどのものを、彼女は前後ともに最強の装備をしている。プリ尻にGカップって……。


ある意味違う意味でも最強なんじゃないだろうか(汗)


「ルルシュ・バーニアだ」


「えっ?」


「えって、私の名じゃ。自己紹介がまだであったろう」


私が驚いたのは彼女が突然名前を名乗っただけではない。パッチリとした瞳の色は鮮やかな翡翠の色で、本当に彼女が最初に言った通りの鼻筋の整ったそばかす美人だったのだ。


うん、負けた。

最強の魔法使いであり、最強のボディを装備し、おまけに美人。


エルフでも首を垂れる逸材!?


「あっ、っとお。私はフレデリカ・ペネットと申します」


「なんだ、マクリーン殿から聞いていた話とは随分と違って、とても礼儀正しい生徒ではないか」


「マクリーン? あっ、学園長のことですね」


「ああ、そうだ。あ奴からは高慢ちきで横柄な生徒が行くが、辛抱強く見てやってくれと言われておる。公爵令嬢の娘はそんなもんだろうと思っておったが、そうじゃないのだな」


あんのジジイ……。

いや、確かにそうかもしれない。


もし、この場所が名前の通りの場所で、そこに居る先生も大した実力がなければ、私は相手には一ミリも尊敬の念を向けていなかったかもしれない。


「さて今日はもう遅い。夕飯でも食べてさっさと寝るとしよう」


「ええ、まだ夕方になったばかりですが」


「来ないとは思うが、常に万全の体制で望む必要があるんじゃ。体力を温存するに越したことは無いであろう。休まぬと魔力は回復せぬからのお。な~~に、魔島から距離も有る。心配するでない」


「はあ……」


「そうじゃ、お前はステーキは好きか?」


「ステーキですか? はあ、まあそれなりには」


「そうかそうか、お前はついてるぞ。今日はドラゴンステーキだーーーー!?」


えっ、ドラゴン?


まさかのまさかじゃないよね。

私はそおっと先生の顔を覗き込む。


「なんだ、此処は見ての通り僻地じゃ。現地調達が当たり前じゃ」


やっぱり、さっき屠ったドラゴンのうちの一匹を先生は拝借したんだ。

でも、いつの間に。


「嫌なら食わんでもいいんじゃぞ」


「いえ、有難く食べさせていただきます」


「うむうむ」


初日の夕食がドラゴンのステーキ。

正直初めは躊躇したものの、見た目とは違いあっさりしていた。


コカトリスよりも脂身はあり、オークよりもさっぱりしている。


「たっ、食べ過ぎて……胃が痛い(泣)」


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