あ、怖い話ですか…。んー、そうですね。ああ、なら、私が学生だった頃の話。その時な家の近くにあった国道◯◯号の話でもしましょうか。

 その道は今もそうなんですが、交通量が多くて車が昼も夜もひっきりなしに走る道で。

 その日はスーパーへの買い物でそこを歩いていました。確かその当時は、お弁当がワンコインで安い!とかでテレビで取り上げられてた頃でしたかね。私も学生の頃は何度もお世話になってましたが、カツに、ハンバーグに、唐揚げに、スパゲッティに…ボリュームがありすぎて今じゃ胸焼けしてしまいそうで…。時の流れを実感しますよ。

 えと、そうそれで、その道の話でしたね。その日も車がたくさん通っていて、風もそこそこ強かった。暑い日だったから、昼間に出たのは失敗だったかもしれません。熱風と日差しで汗だくにで。肌がチリチリと痛くなった。陽炎も揺らめいていたし、道路も日射でキラキラと光っていましたよ。

 で、そんな暑い中、少し意識が飛びそうになりながらもスーパーを目指していたわけですが、ふと黒い何かが、道路で風に舞っているのが見えたんです。

 最初はスーパーの袋だとか、畑とかにある何かビニールのようなものがどこからか飛んできて、車と車の間を転がったり、上に舞っていたりしたのかなと思ってたんです。私、目が悪いから、結構近くに行かないとわからなかったんですよね。

 で、歩いているうちに、そこに近づいていき、それが何なのかはっきりわかった。気づいた瞬間、肌が泡立ちましたよ。

 髪が長い、人の頭でした。赤黒く血みどろの、女とも男ともわからないのが、何度も何度も行き交う車に轢かれては、跳ね上がって転がってを繰り返してたんです。まるでそれを楽しむように。何度も何度も。皮膚や髪や血を撒き散らして。

 ドライバー達にはぶつかった感覚はないのか、はたまた見えていないのか。皆、気にせずどんどん頭を轢いていくんです。その度にどんどん頭はドロドロになって変形していきました。

 私、しばらくその様子に釘付けになっていたんです。

 どれくらい時間が経ったかわかりませんが、汗が背中をツーっと通って、その感覚で、ハッとしました。

 それで、あれはこの世のものではないって目を逸らそうとしたら、こちらに気づいたのか、ニヤッと笑ったんですよ。あの頭。もう目も口もなんなのかわからないくらいドロドロになってて、私自身目が悪くて、本当だったら表情なんてわからないはずなのに。頭が理解させられてしまったんです。

 そのまま、あの頭は何事もなかったように、フッと消えました。いったい何だったんでしょうね。アレ。


 あとで調べたんですが、その道、大きな事故とかはなかったらしいです。けど、全国的にそういう現象起きてるとかで。また今日みたいな暑い日はどこかで笑ってるんでしょうか。

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