毎日通る道に変な銅像がある。

カゴをもった少年の銅像である。

所謂、そこの家主の趣味で置かれたものなのだが、塗装が少し剥げ、なんだか不気味であった。


その日もそこを歩いていると何やら視線を感じた。

あの銅像が視界に入る。なんとなく吸い寄せられてしまった。


近づいてマジマジと見て気づいたのだが、この銅像の目には黒目があった。穴を開ける手法で作られていた。

銅像はカゴに目線を落としていたから、今まで気づかなかったのだ。


そんな発見を家族に話そうと思って、銅像にスマホを向けて写真を撮っておいた。

家に帰って早速、家族に話そうとして、写真フォルダを開いて声が出た。


写真の中の銅像がこちらをじっと見ていたのだ。

穴の空いた虚な目で。

確かにカゴを見ていたはずなのに。

なんだか怖くなって、家族に話す気になれなかった。

今もその道を通るが、その後、銅像と目が合うことはない。彼は恥ずかしがり屋なのだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る