ありふれた日常【完】
葉音
第1話
朝、目覚めて朝食を食べる。
好きな物は目玉焼き。それからウインナーも合わせる。
野菜も食べなきゃいけないのに、と思ってはいても私の口がそれを好まない。
冷蔵庫からお茶を取り出す。
ほうじ茶が1番すき。その次に緑茶。麦茶だけはダメ。どうしても好きになれない。
好きな物をテーブルを目の前にして、いただきます。と手を合わせてピンク色のお箸を取り朝食を済ませる。
洗い物を済ませて、冷たい床のフローリングに座りテレビをつける。
ニュース番組が話題の特集をしていて、どうやら日本人の画家が世界的有名な賞を受賞した記念の作品の公開が行われてるらしい。
特にすることも無く、近くで行われてるらしい。
正直絵など、どうでもいい。
興味なんてない。
予定もない、なら見に行ってみよう。
慣れた手付きで髪を巻いて化粧は薄めに、それから服はどうしようか。
何となく気分がワンピースだったので、黄色いワンピース。鏡に映った自分におかしい所はないかと確認したけれど特に無かった。
鞄に必要な荷物を詰め込み、玄関にある白いサンダルを履き外に出た。
外に出た途端に、日差しが強いとテレビの天気予報士が言っていた事を思い出してまた玄関を開けて麦わら帽子を手に玄関の扉に鍵をかける。
最近無くした鍵の代わりを使っていたのだけど、どうやら差し込みが悪くて少し手間がかかってしまった。
少し暑さがあるアスファルトをお気に入りのサンダルで歩いた。よく行っていたパン屋を通り過ぎ、駅に着く。
いつぶりかの電車を懐かしみながら、数駅。
目的地付近ではかなりの人が居る。
まだ早い時間だというのに、かなりの行列でもしかしたら見れないのかもしれない。
並び順でチケットを買えたのは1時間後の事だった。
暑さに自動販売機で水を買って、14時からの入場チケットを確認して近くのカフェで時間を潰す事にした。
人の多いところは少し苦手。
だからあまり並びがない場所がいいのだけども、近くのお店はどこもいっぱいで仕方なく並ぶ事にした。
かなり待って案内されたカフェは最近出来たばかりらしくて、花をモチーフとしたコンセプトなのか店内は女性が好きそうな色鮮やかな花が飾っていて、テラスには花に詳しくはないけれどよく知った黄色い花を見つけて頼んでいた甘いアイスカフェラテ、それからサンドウィッチを口にした。
そろそろ、と綺麗な花を目に焼き付けて代金を払って店内を出た。
この時間の外はかなり暑くて、汗がとめどなく溢れる。
美術館に入ることが出来て涼しい風がとても気持ちいい。もう外になんて出たくない。ここに居たい。
日本で一番広いであろう美術館に初めて来たけれど、思ったよりも広くて、作品なんて詳しくない私でも何故か心が踊る。
歩いていると、人が少しだけ多い場所にたどり着く。
それは今日ニュースでやっていた画家の作品。
テレビで言っていた通り、興味が無い自分でもこの方の作品は目を奪われる。と。
花畑を一面として、ぽつりと人が立っているその絵。
瞬きもしないでじっくりと遠くから見つめていた。時間を忘れるぐらい。
その後、他の作品を見てから美術館を出ると着信の通知にスマホをタッチする。
「はい」
「どこにいるの?迎えに行こうかなって思って」
「今は───、て所」
「なんでそんな所に?」
「テレビで見た作品を見たいなって思って、暇だったから」
「朝日奈柊の作品?」
「そう、よく知ってるね」
「有名だしね、それに俺もあの絵凄い好きだから。今回のはマリーゴールドの花をモチーフとした一人の少女の作品だったね」
「そうだね」
「今日うち来るんじゃねぇの?」
「どうして?」
「だって明日籍いれるから俺の親と、茉莉の親が家来るならこっち来てた方がいいだろ?」
「確かに」
「迎えに行くけど、暑いからどっか入っとけれる?着いたら連絡入れる」
「分かった」
通話が切れて、やっぱりもっと見とけばよかったと目に焼きつけた記憶を思い出しながら麦わら帽子を少しだけ押し込んだ。
───まだ、余韻に浸りたいと。
ありふれた日常【完】 葉音 @hanonn123
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