プログラムいじってたけど機械のメンテナンスさせられてる話
不労つぴ
前編
「つぴくん。装置保全部隊に行ってくれないか?」
うちのボスは、普段ヒラの社員が使わないような会議室に急遽呼び出して言った。僕の隣には今の上司が座っている。
言われたときは意味がわからなかった。青天の霹靂という言葉はこういうときに使うのかななんて脳内で考えた。
僕は今年で入社2年目の会社員。大学は情報系で、配属先は入社していたときから憧れていたプログラム系の部署。
昨年の夏から仮配属となり、本配属になって3ヶ月。ようやく仕事も覚えてきてついに案件まで任せてもらってこれからだというときになんでまた飛ばすのか。
うちの部署は大きく2つの部門に分けられ、その2つはやることも大きく異なっていた。仮にそれらをAとBとする。
AとBの違いは、移動手段が新幹線か飛行機かみたいな感じの違いだと思ってもらいたい。目的地を目指すという点では一緒だが、方法が違う。
僕が所属しているのはAで、これから飛ばされるのはBだった。
Bの部門のことはあまり分からない(そもそもAの部門についても詳しいかと言われると怪しいが)、しかも装置の保全など専門外だ。僕は機械工学系については全くのド素人である。
さらに配属されてからまた半年研修らしい。
入社してから1年間研修で、最近実務に携わるようになり3ヶ月。
そう。たった3ヶ月しか実務に就いていないのだ。
理由は人手不足だかららしい。よくある話だ。
僕は入社して日が浅いので、今ならまだ育成ルートを変えられるだろう的な感じだと思う。
ポ◯モンでいうところの、イーブイをブースターに進化させるかシャワーズに進化させるかみたいな感じかもしれない。
僕は異を唱えようと、口を開きかけ――。
「分かりました。頑張ります」
言いたい言葉はあった。でも、言える空気ではなかった。
当然、ヒラの社員である僕が断れるわけもなく、異動は確定してしまった。
上司は、不安で胸を引き裂かれそうな僕に対して「何かあったら遠慮なく言ってね。もし辞めるなんてことになっても、うちで引き取れないか頑張ってみるから」
と言ってくれた。
本当にいい人だと思う。出来ることならこのまま彼の下で働きたかった。それくらい当時の上司は聖人だった。
2人しかいない先輩も、僕の異動を悲しんでくれた。僕が配属されてからずっと面倒を見ていただいた偉大な先輩方である。
「あっち行っても元気でな」
「また戻っておいで」
僕は本当にいい先輩に恵まれていたのだなと目頭が熱くなった。
こうして、僕は異動となった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます