彼女の苛立ち、彼女の過ち ~いや、毎日山越えてる意味よ……~

あいお明

【序】彼女の現在地

「早いんは○Rか。でも私鉄のほうが安いし、駅近いよな。ん~、どないしょ……」


 中学3年ちゅうさんの息子が、頭をポリポリいている。

 来週の高校見学オープン・ハイスクールに向けて、スマホで調べ物してるところだ。


 彼の第一志望は、市外の某府立校らしい。普段は


「○○の4番になる!」


とか言ってるのが、うそみたいな堅実けんじつさだ。


 私とは似ても似つかない、顔以外はね。

 不思議だ……



 ◇


 思わず自分の時と比べてしまうのが、親の悪い癖なのか?

 とにかく、あの頃はまだ、インターネットが高級品みたいなものだった。


 いや、PCパソコン携帯電話ケータイはあったよ。でもスマホやタブレットほど、お手軽で便利じゃなかった。

 だからたとえば、電車の乗り換え案内なんてなかったよね。

 で、通信速度も遅かったから、うっかり画像を開けちゃうと……


「へんじ が ない 。 ただ の しかばね の ようだ」


なんて、よくネタにされていた。



 あの頃がなつかしい……というより、今の子がうらやましいな~、私は。



 ◆


 隣県りんけんの農家に生まれた私は、ある私立高校を選んだ。


「制服がかわいい」

「地学の先生がいる」


 それだけの理由で選んで、後悔した――――


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