第2話・気になる商品

【OPEN10時〜CLOSE22時】


 出入口の自動ドアには、そう表記してある。


(この店は24時間じゃないんだな)


 山科は『ユーラインマート』になぜだか興味が湧いて、店の中に入っていった。


 

 入店音が鳴る───

 某コンビニの入店音にそっくりなメロディーが流れ、山科は噴き出した。


「駄目だろ、これwww」


 思わず一言、本音が漏れた。



「いらっしゃいませ!」


 レジカウンター内にいる男性店員が、山科の方を見て元気に挨拶した。


 店員の容姿は、くりっとした目が特徴的で、山科に負けず劣らず小太りだった。



 彼は店内を見て回る。


 客は山科が1人だけのようで、その分快適にゆったりと買い物を楽しめた。


(この店、面白いな)


 定番商品以外に、海外の珍しい商品や今ではなかなか見ない商品まで置いてある。



 山科はお菓子コーナーの棚に置いてあるポテトチップスを手に取った。


(中学のときに友達とハマってやつじゃん! これ今も売ってたんだ!)


 山科はテンションが上がって、ついカゴの中にポテトチップスを入れてしまった。


(ヤバい。また太りそうだ……)


 彼は罪悪感を感じながらも、見たことがない海外のエナジードリンクや、小学校のときによく食べた駄菓子のソースせんべいなど、気になる物をどんどんカゴに入れていった。



 それらの商品が入ったカゴを、山科はレジカウンターに置いた。


 ユーラインマートは自動レジでは無い。


(最近では珍しいな)

と、山科は感じた。



 男性店員が1点、1点、と商品をスキャンしていく。


「レジ袋と箸もお願いします」


 と、山科は店員に伝えたあと、店員の名札に目をやった。


 『駒野』という漢字で記されている。


さんか……)


 山科の脳内には『泣いているサッカー選手』の顔が浮かんだ。



「2972円でございます」


 レジ計上が終わり、駒野が合計金額を言ったタイミングで、山科はレジ横の商品が気になった。



「あの、これ何のトレカですか? 初めて見たんですが」


「そちらの商品ですか。『ライフタイム・カード』です。ぼくも正直よく分からないんですが、うちのオーナーがトレカ好きで色々と珍しい商品を見つけて来るんですよ」


 山科は『ライフタイム・カード』を手に取り確認してみた。


 ハイハイをしている赤ちゃんのキャラクターが印象的なパッケージだ。


 5枚入りで、税抜き300円。


【世界に1枚しかないあなただけのカード!】

と、キャッチコピーが書かれてある。


 表面(おもてめん)の下方には【第1弾・自分編】、裏面には【全???種類】と、表記されている。


(結局全部で何種類なんだよ……)




「あの、お客様……そちら、購入されますか?」


(そういえば会計が済んでいなかった……)


 山科が圧を感じて後ろを見ると、いつの間にか3人の客が並んでいた。


「買います!」


 とっさにそう言った山科は、『ライフタイム・カード』も他商品と一緒に購入した。





















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