第27話 出産
ある時、ゆなが真剣な表情で健斗に相談を持ち掛けた。
「私、子どもを産みたい。」
健斗は目を見開いた。
「ゆなは子ども作る予定なかったんじゃ。」
「前はね。でも、今はラパールから完全に離脱できてるし、元気いっぱいよ。1つ気になるのは、私の症状が遺伝するかどうか。」
「自閉症、統合失調症はもはや過去の病気だしな。あとは、田村病の遺伝率が心配ってわけだ。」
彼女は静かに頷く。健斗とゆなは小児科医に彼女の身体を診断してもらった。
「信じられないことに、今の彼女に異常は見当たらない。ラパールは田村病と呼ばれる障害を完治させられることが証明された。お子さんが何らかの障害を持って生まれる確率は、多く見積もっても4%前後じゃよ。じゃが、この数字は普通の人と何ら変わらん。どれだけ健康な人からも、一定の割合で健康ではない人が生まれてしまうからのう。」
もはや今の彼女は普通の人と何ら変わりがない。田村ゆなは、子どもに万が一のことがあれば自分がすべての責任を負うと言った。その時の彼女の目は、今まで見たことがない、大人の瞳をしていた。
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