第18話 ゾンビ化

全国各地の精神科に、大量の患者が押し掛けた。医師たちはこの緊急事態を重く受け止めていた。なぜなら、彼らは皆同じ症状を抱えていたからだ。何でも人肉が食べたくなるそうなのだ。そして、恐るべきことにその症状は皮膚感染する。まるでゾンビのようだ。当然、慶東病院にも数多くの患者が押し掛けた。ゆなが得意とする集団療法により、彼らの多くは正常な状態に戻った。しかし、慶東病院以外での病棟では彼らの対応に苦慮していた。

「人肉を食べたい願望が皮膚感染か。まるでゾンビだな」と優斗。

「まずいな。このまま彼らが増え続ければ人類滅亡の危機だ。」と健斗。

そう、放っておけば彼らは欲望を抑えきれなくなる可能性が高い。その結果は悲惨なものだろう。全国の病院に、特例処置が通達された。彼らの身柄を身体的に拘束して良いとのことだ。通常、何の理由もなしに身体の自由を奪うことは人権侵害に値する。しかし、今はそのようなことをとやかく言っている場合ではない。このままでは人類滅亡の危機なのだ。医療業界だけでなく、この事実に全世界が激震を覚えた。この病気への有効な治療法が見つからなければ、彼らは何の罪もなしに命を落としてしまうかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る