ギャンブルのギャンブルのギャンブル
ちびまるフォイ
勝敗があればそれはギャンブル
ここは首都で有数のカジノ都市。
観光客がこぞって訪れてはギャンブルに挑戦する。
二人の男は負け越していったん外に出ていた。
「カジノはやっぱりだめだな」
「あのディーラーが悪さしていたに違いない」
「そうだよな。あんなにルーレットで赤ばかり……ありえないよ」
「もうギャンブルはやめよう」
「だな。どうせ店が勝つように仕組まれてる」
「……」
「……」
「でもまだ軍資金はあるよな?」
「まだあのカジノに挑戦するのか?」
「いいや、もっとフェアなギャンブルをしよう」
すると、カジノへと吸い込まれていく客の一人を指さした。
「あの人がいい。あの人がギャンブルを終えてカジノを出てくる。
その結果、勝ったか負けたかを賭けようじゃないか」
「なるほど。ギャンブルする人でギャンブルするのか」
「これならディーラーやら店の細工もされないだろ」
「じゃあ俺は"負ける"に賭ける」
先手必勝。カジノなんて店が勝つようになっている。
ということはトータルで見れば、客が負ける確率が高いはず。
「それじゃ、私は勝つ方だな。客が戻ってくるまで待っていよう」
各々で時間を潰して客がカジノから戻ってくるのを待った。
しばらくするとカジノから客が出てきた。
「お戻ってきた。結果を聞いてこよう」
客に声をかけて事情を話す。
「……というわけで、あなたでギャンブルをしていたんだ。
俺は負けた方に賭けて、こっちは勝った方に賭けた」
「結果を教えてくれないか?」
すると客は答えた。
「今回は勝ちました」
友達は大喜び。
「やった! 的中だ!!」
「くそ……運のいいやつめ……」
友達にお金を支払ったが、あまりに悔しい。
「もう一度やらないか?」
「もちろん」
「今度も負ける方に賭ける!!」
「じゃあ私は勝ち側で。客は、あの人にしよう」
「ああいいぞ」
次のギャンブル対象者を決めて、外で自由に待つこと1時間。
客がカジノから出てきたところに声をかける。
「おいあんた! ギャンブルの結果を教えてくれ!」
「え、ええ!?」
「私とこの男で、あなたのギャンブル結果に賭けていたんだ。
私が勝ち。この男が負け。結果はどうだった?」
男はなにか伺うような視線を送った。
「結果は……勝ち、だったよ」
「っしゃあああ!」
「そんな……」
自分は2連敗。こんなことがあるのか。
しかし自分もギャンブラーのはしくれ、ここで諦める男ではない。
「三度目の正直だ! もうひと勝負!!」
「負け続けじゃないか? まだやるのか?」
「もちろん。ここで逃げてたまるか!」
「いいだろう。それじゃ客は……」
「待った!!」
「え?」
「思えば、さっきからカジノに入る客はお前が選んでたな?」
「ああ」
「本当は客と内通してるんじゃないか?
お前が勝つように結果を細工してるんじゃないか?」
「そんなバカな」
「細工してないんなら、客は俺が選ぶ。
そして客に結果を聞くときも俺が結果を聞く、いいな?」
「いいけど……どうして?」
「お前がどっちに賭けたかを聞いてから、
結果をねじ曲げて報告するかもしれないだろ」
「うたぐり深いな……」
「こんなに勝つなんてありえないからな。
いいか、カジノの監視カメラを見たり、客の様子を聞くのもだめだ。
客が戻ってくるまで……そうだな、通行人のおっさんと会話でもしていろ」
「まるで暴君だ」
「お前がズルしている可能性があるからな!」
「それで、お前はどっちに賭けるんだ?」
「負ける側に決まってるだろ!
客は……あいつにする!」
「それじゃ私はまた"勝つ"に賭ける」
ギャンブラーを賭ける最後のギャンブルがはじまった。
今度は裏取引もさせない。
自分は友達が変なことをしないよう見張っているし、
客も自分が無作為に選んだのに仕込みの可能性も低い。
友達は指示通り、なんか知らんおっさんとひたすら会話している。
内通者と連絡したりもできないだろう。
それから1時間後。
「あ! 戻ってきた!!」
自分がランダムに選んだ客がカジノから戻って来る。
その暗い表情を見て嬉しくなった。
「負けたっぽい!!!」
「結果を聞くまでわからないだろ」
葬式よりも沈んだ顔をした客にかけよる。
「はじめまして、ちょっといいかな!?」
「なんですか……」
「実は俺たち2人は、あなたのギャンブル結果に賭けていました。
結果を聞かせてくれませんか?」
「悪趣味なことを……」
「で結果は!?」
「見ての通りです。負けましたよ」
客の結果を聞いて喜びがぶちあがる。
「やったぁぁーー!!! ついに勝った!!」
負けに賭けていた自分の的中となった。
客はそそくさと帰った。
「ほら! やっぱり!! 三度目の正直だ!!」
「わかったよ……。今回はお前の勝ちだ」
「ほれほれ、裏工作していないとこの程度か? ん?
悔しいだろ。わっはっは」
「なんでズルした前提なんだよ」
「お前ばっかり勝つなんてありえないからな!
確率は収束するんだ! ざまあみろ!!」
久しぶりの勝利を手にしてご満悦。
頭の中のドーパミンが溢れ出して快感に包まれる。
これだからギャンブルはやめられない。
勝利の美酒におぼれていると、
友達と話していた知らないおっさんがやってきた。
「ちょっといいかな?」
「なんです?」
「君は、この人とのギャンブル勝ったのか?」
「ええ、そりゃもう圧勝ですよ。
私はばっちり的中して勝ったんです。最高だ!!」
「ああそうかい。それは残念じゃ……」
「ざんねん? 何が?」
おっさんは振り返り、話していた友達にお金を渡していた。
「賭けはワシの負けじゃ。
お前さんの方が勝つと賭けていたからな……」
友達は負けたぶん以上のお金を受取り大喜びしていた。
「勝ってくれてありがとな」
友達の笑顔に自分はもうギャンブルやめようと思った。
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