(25)夏休みの日程

 「ただいま」

 

 姉とヨウスケが家の母に声をかける。

 

 「おかえり。どやった?」

 

 「お姉ちゃんに大阪の展望台連れてってもろた」

 

 「うん、めちゃめちゃ景色良かったな」

 

 「そう、よかったね。ヨウスケは課題のネタは拾えたん?」

 

 「うんうん、お姉ちゃんにいろいろ教えてもろた。さすが大学生や」

 

 弟の言葉は、素直に姉に感謝しているようだった。

 

 「アズサはいつごろ大学に戻るん?」

 

 母が急に姉の帰りを聞く。一日でも長く実家にいてほしいようだ。

 

 「うーん、まだよう決めてへんけど、あと四、五日かな」

 

 「お盆まではおってよ。でないと、お墓参りできひんやん」

 

 「あ、そやな。いつも行ってるから、うっかり忘れとった」

 

 母は、少なくともあと一週間は娘が家にいることになったので、ちょっと安堵した。とはいえ、いずれ大学に戻るのであるから、あまり自分のわがままを言うこともできない。そう思っていると、アズサが、

 

 「うん、ウチ、お盆にこっちおったら、帰りは帰省のUターンラッシュに巻き込まれんように、お盆明けまでおるわ。ええ?」

 

と、なかなか母親の心を汲むようなことを言う。実はアズサも、この実家は大好きだったので、もう少し父母、弟と一緒にいたかった。

 

 「うぜー」

 

と、ヨウスケが言ってみる。その顔は明らかに、姉がいて嬉しい、という表情であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る