【大阪のオバチャン】掌編小説

統失2級

1話完結

須賀史郎は27歳なのに完全にハゲていた。そして、須賀は日本でハゲの人間を馬鹿にする風潮が蔓延している原因はハゲで笑いを取る大阪芸人にあると考えていた。その為、大阪という街を心の底から憎んでいた。結果として、須賀は大阪に復讐する計画を立てる事になる。それは些細な復讐だった。その復讐とは全国放送のテレビで紹介された大阪のオバチャンが個人経営するたこ焼き屋でたこ焼きを購入した後に、オバチャンの目の前で購入したたこ焼きを地面に叩き付けて、片足で踏み付けるという復讐だった。初夏のとある日、須賀はついにその些細な復讐を決行した。オバチャンは何とも言えない哀しそうな顔をしていた。そして、須賀は爽快な気持ちで長距離夜行バスに乗り込み横浜に帰った。しかし、その出来事があってから須賀の身の回りでは不可解な現象が立て続けに起こり始める。横浜の街を歩いていると、行く先々で数多くの通行人が須賀の目を見ながら、口汚く怒鳴り付けて来るのだ。それは決まって大阪弁で須賀のハゲを揶揄するセリフだった。「おいそこのハゲ、イテこましたろか!!」「お前、ハゲの癖に調子に乗ってんな、万博跡地にダイオキシンゴミと一緒に生き埋めにしたろか!! それともアスベストゴミと一緒の方がエエか!!」「ハゲは外出したらアカンねん、今日は機嫌がエエから見逃したるけど、今度、見掛けたらホルモン焼きにしたるからな!!」「ハゲは非国民や、ハゲはさっさと日本から出て行かんかい!!」「ハゲは切り刻んで、大阪湾の魚の餌にしたるぞ!!」「どんな脳みそをしとったら、そんなハゲになるんか大阪大学病院で一遍、脳みそを切り刻まれて、研究して貰ったらエエんや!!」等と須賀は連日、街中で罵倒されていた。須賀は元来、気の弱い男である。須賀は外出するのが怖くなり、一人暮らしのマンションに引き篭もる様になった。その結果、10日程で食料は尽きたのだが、通行人から罵倒される事を恐れ、買い物に出掛ける事が出来ないでいた。そして、哀れなる須賀は食料が尽きてから42日後に餓死する事になってしまうのだった。


須賀の最大の過ちは喧嘩を売ってはいけない相手に喧嘩を売った事にあった。須賀があの日、大阪の街で喧嘩を売ったたこ焼き屋のオバチャンは実は豊臣秀吉の直系の子孫であり、大阪を裏から支配する大阪の主だったのだ。須賀を横浜の街中で罵倒していた人間たちは、あのオバチャンの手下たちだった。大阪を代表する著名な政治家である橋本博文でさえも、毎朝、土下座挨拶を実行する為に、あのオバチャンの自宅を参拝するほど、あのオバチャンの権力は絶大であった。悲劇の人、須賀史郎の死の真相は闇から闇に葬り去られ、その訃報は都会の喧騒の中に埋もれて行くのでした。合掌。


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