後藤海斗のダイエット

心夢宇宙

0日目 後藤海斗のダイエット

 後藤海斗ごとうかいとは痩せたかった。それはもう何年も抱いている悲願だった。彼が太ったのは、小学二年の───。


 共働きで両親の帰りが遅く、しかも親の関係が悪いことや病気などの家庭の事情も相まって、彼の食事は用意されていない事がままあった。母親はクズの父親が何もしない代わりに家の事を殆ど何でもやったが、それでも仕事が忙しく、帰ってくるのが遅く、とても十全とはいかなかった。

 

 こんな環境の原因の多くはクズな父親が占めている。彼は十二分な稼ぎがあるのにも拘らず、子供達の給食費さえ出し渋る様な、非常に吝嗇な───ケチな───男だったのだ。生活費さえも家に入れないで、自分は浮気をして外で好き勝手している。帰ってきたら帰ってきたでDVを働き、子供達を守るために母親はいつも『みえないところに』、青痣が絶えなかった。


 そんな男を選んでしまったのは母親の『ミステイク』、ミスかどうかという判断を取り除いて思考しても彼女の『選択』であるとも言え……。またその二人の子供でなければそれは『後藤海斗その人』ではなかっただろうから……。それも仕方のない事なのだと考える向きもあろうが……。幼き後藤海斗にはそんな風に考えられるほどの余裕はなかった。


 全てが自己責任なこの現代日本社会に於いては、特に恵まれた人間ほど、他者が自己の性質や問題について『他人ひとの所為』にすることをあたかもアレルギーかのように、はたま蛇蝎かだつの如く嫌い、目の敵にするけれど……。


 実際物事には原因が勝手、それをありのまましかか認知認識することは再発防止や問題解決において重要な事だという考え方もあろうに……。


 人々はそれを許さない事を当たり前の様にして過ごしている。なぜならば想像力も知識も体験も気づく力も考える力も不足している人間が非常に多いから……。


 言及されている事が全てと考えて言及されていない事は存在しないと考える様な人たちが、無闇に人を槍玉に挙げて袋叩きにするけれど、果たしてその人々がどれほど『大した人間』だと言うのだろうか……。


 などとそんなことを考えながら、後藤海斗はてくてく道を一人歩いていた。その歩けばぼよよんと震える、たわわに実ったボディを携えて───。


 自分が太った理由、原因。それはもちろん自分のせいなところもあるのだろうけれど……。


『親が食事の管理をしておらずうちにあるもの適当に食べてという環境』にあって、『太る事のデメリットなどを説明したり、そうでなくてもただ注意することもない親』であり、『主菜や副菜などの栄養バランスの揃っていないインスタントラーメンや目玉焼きばかりの生活だったから、どうしても食べる量が増えてしまった』とか、いくらでもそれらしい原因や理由は思いつくのだった。


 しかしこんなことは他人ひとには言わないのだ。何故かはもう、言っちゃったね。心の中でね。


 さぁそれがここにきて────。後藤海斗は、俄に強く決心する。


『もう暫く何も食べない。僕は痩せるんだ。断食して、痩せるんだ!!!』


 後藤海斗の意志は堅い。彼の断食生活が始まった───。


 その理由・原因はまた、別の話なのさ────。


 2025年5月13日(火)

  体重      105.6kg

  体脂肪率    32.6%

  計算上体脂肪重 34.4256kg

  計測骨内臓等重 67.5kg

  不明な重量   3.6744kg


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※当連載もフィクションであり、実在の人物、団体、宗教、その他あらゆもの、あらゆることなどと、一切関係ありません。

※そもそも、私の連載は全てフィクションです。特にノンフィクションであるという事を明示しない限りは、全てフィクションです。

※登場人物の考えや思い、体験や知識や性質等が、作者の考えや思い、体験や知識や性質等であるとは限りません。

※当連載も、私のプロフィールは『登録サイトサービス一覧』等に記載されているwebサイト等で同時掲載されている場合がありますが、それ以外のwebサイト等には掲載・投稿しておりません。

※私の連載を閲覧することによる精神的、および身体的不調など、其の他あらゆる影響につきましては、言うまでもなく責任はとれませんので自己責任でお読みください。

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