知識に咲かせる無知の花

@Icey1092

Prolog-魔法と科学 ”Trick and Truth”

Prolog-知識に咲かせる無知の花


”The flower of Innocence

that blooms for the wise mankind”


1000年もまえの人に、ライターをみせたらどう

思われるだろう。そうだな、ここではあえて

舞台を中世ヨーロッパとかにしよう。

あなたは凄い能力者だ!

どうやってやっているの?気味が悪い!

なんて、現代人だったら、

タネも仕掛けもございませんよと

つい、いいたくなってしまう。

だがそれは私たちがその「タネ」を理解しているからだ。摩擦熱でガスに着火しているだけ。

ただそれだけだ。


では逆に、1000年さきの未来からきた人から、

テレポート技術をみせられたりなんかしたらどう

だろう。私たちは魔法だの、タネが隠されている

マジックであろうだの、思うのかもしれない。

もしかしたら、そのなかにはその「タネ」を

探し出そうとする好奇心旺盛だったり研究熱心な

人もいるのかもしれない。

魔法とマジックの違いはなんだろう。

単純だ。マジックにはタネがあって、

魔法にはない。

と、思ってしまうほどに現実と乖離している。

それが魔法。科学では証明がつかず、ましてや

証明できる根拠すらない。

しかしそれは、受け取り手の反応の違いに過ぎない。ライターを見せられても、驚かない人がいるかもしれない。たとえば、科学者だ。

何故かって?それは普通に生活していたら

触れることもない化学概念を知っている

彼らからしたら、それは研究対象に過ぎないからだ。その科学者でさえ、ありえない!とたまに声を荒らげるのは、それは大変おめでたい、

人類の進歩だ。


この理解の差。この知識の差こそ、私たちに魔法をみせる余白。無知の影、幻影なのだ。

無垢なこどもがマジックをみせられて、

目がキラキラして、夢や希望を抱き、家族からの愛を受けたとしよう。これもある意味で魔法だ。

理屈や客観などでは切り取れない。

あなたは死が怖いですか?死を知っていますか?

こう問われて完璧に返せる生きた人間は存在

しないでしょう。

だって死に関して無知なのだから。

この漠然としたもやもや、これこそが魔法。


では、もしこの世の現象全てに

説明がついて、明確に絶対的な理由でも

あったら?


魔法は消える。


魔法が消えたら誰が困るか、中世で魔女を迫害

していた審問官が職を失う。なんて冗談は置いておいても、せいぜい聡明な子供がマジックで興奮

できなくなるくらいだ。

実際には誰も困らない。

...

いや、本当にそうだろうか?

魔法とは、合理化されたものとは対象的に、

全くもってカタチをもたない

いわば屁理屈のようなものだ。

夢、愛、希望、感覚、感情、そして死。

それらをなくしてまで人間は人間と呼べるのか。

魔法は無知の影。知識の天井のまたさらに上を

泳いでいる。こんな希望にありふれた概念が、

本当に消えてしまってもよいのだろうか?


科学で証明できれば魔法は消える。

では、「科学で証明できるらしいんだけど理解

できない現象」は魔法といえるのか?


状況を整理しよう。時は西暦でいうと5012年。

そんな時代に、「魔法」を信じ続ける

一人の少女がいた。私たちはAIにより、AIが

自ら、際限なく進化していき、我々人類が到底

理解できない「オーバーテクノロジー」を元に、

だんだんと生存の整合性や、感情への合理化を

経済格差を背景に、文明を築いている時代だ。

ここでは空も飛べるし、無と思われる空間から

火だって鉄だってだせる。

これにはAIによって与えられた魔法だという人もいるだろうし、知ったかぶりの権力者が

「全て人類のチカラであり、英知の結晶だ」

ともいう。ただこれは、そのオーバーテクノロジーによって引き起こされている現象に過ぎない。

これは科学。魔法ではない。そういわれても、

首をたてにと振れますか?

漠然とでも理解できない現象に、

魔法ではなくこれは科学だといえますか?


希望を魔法とするのであれば、それは単なる

火なのではない「心」に灯すための祈りの行灯。


愛を魔法とするのであれば、それは単なる

抗鬱剤などではない「生」に目的を与える

ひとつの和やかなひかり。


そんな世界で、

「科学」の存在証明「魔法」の存在意義を背景に

ひとりの少女がちょっと素敵な旅をする。

そんなお話です。

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