十五話 魔女、狩人に出会う 其の拾伍
姉妹喧嘩が終わり、3日が経った。
その3日後の夜、
そこは自分が3年間寝泊まりした見知った天井、アルベールの家の物があり、身体中に響く痛みに耐えながら体を起こした。
「わた、し、いき、てる?」
姉をこの手で殺してしまったこと、自分も彼女と共に死ぬはずだったのに生き延びてしまったことへの罪悪感、対話を最後まで出来なかったことへの後悔。
頭をゴチャゴチャと回り、パンクしそうになるとガタと言う音が鳴り、
「よ、
その方向には、アルベールが立っていた。手には折敷を持っており、それらにはパンとスープ、そして、サラダとベーコンが置いてあった。
「爺ちゃん、私なんで生きてるんだ?」
姉、
「死ぬ直前を前にして、お前は【魔術師】として、覚醒したんだと思うよ。死の淵で、【魔力】が湧き上がり、生存本能が働いた結果、俺が見に来た時にはお前はその場を生きて抜け出せる程度には回復してた」
「……そっか」
「そんな顔するな、
アルベールは
その光景を目の当たりにしたアルベールは、
「頑張ったよ、
その言葉には慰めだけではなく、彼女の3年間を無駄ではないと肯定しようとする物でもあった。
しかし、それを「はい、そうです」と認められるほど
「でも、姉ちゃんと、話すって言ったのに、最後まで、戦うことしか、出来なかった」
自分がやると言ったことを出来ずに、終えてしまった事への後悔。
アルベールはその後悔を、負い目を感じさせないための言葉を告げる。
「相手にその意思があるかないかは大切だ。お前だけのせいじゃないよ」
「私がもっと強ければ、止められた、かな」
自分の補えきれなかった部分を探して、否定しようとする懺悔。
認められない。
認めれば姉を否定してしまう様な、そんな気がしてしまう。
だが、それをアルベールは否定せず、彼女が成し遂げた事だけを伝えた。
「わからない。俺から見た
その言葉を聞き、
強がりで、意地でも強くあろうとしていた彼女は崩れ、今、あるのは姉を失った妹しての
アルベールはそんな彼女を何も言わずに頭を撫で、泣き止むまでその横にいてくれた。
30分程、
「落ち着いたか?」
「少し」
「そうか。おかわりもあるけど、いるか?」
「パン、スープ、ベーコン」
「はいはい、全部な」
三日ぶりに食事にありつけると、おかわりも全て平らげ、
「なぁ、爺ちゃん、姉ちゃんって死体ってどうした?」
「俺が回収して、
「ありがとう、爺ちゃん」
(これからどうやって生きて行こうか。ずっと、爺ちゃんにお世話になるのは悪いし)
歩く間、これからのことや、色々なことを考えるとすぐに、目的の場所に到着した。
森の中には墓石がポツンと置いてあり、そこには漢字で
「姉ちゃん、婆ちゃん」
そう呟くと、花を供え、両手を合わせた。
(ごめんなさい、姉ちゃん。あなたを止めることが出来ず、こんな結果でしか、話が出来なかった。そんな私を許さないと思います。だけど、私は初めて、姉ちゃんの本音を、自分を嫌いだと言い張る姉ちゃんを、見れて少しだけ嬉しかった)
色々な思いを馳せながら、
「姉ちゃん、婆ちゃん、私ね、これから【魔術師】でもなく、【狩人】でもない、生き方を探してみようと思うんだ。それが何になるかは分からない。けれど、それがいつかあなた達に報いる生き方であったと言い切れる様に頑張るから。だから! これからの人生、真っ直ぐに、歩いて行くよ」
これからの世界を生き抜くために。
だが、それがまだ、物語の序章に過ぎないのを
何故なら、これは【魔女】の物語。
まだ、【魔女】はそこには居ない。
本当の始まりはここからであることを、誰も知る由もなかった。
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