二十五話 狩人、試験に挑む 其の壱
奇襲を仕掛けたアルマンダインにツカサはナイフを突き立てようとするもその一撃を彼は素手で止めた。
「ほう、口だけの者じゃ無いらしいな」
「お前こそ、映像で見たよりも随分もまぁ、太々しいな」
互いに見合いながらバチバチと火花を散らすと会場は彼ら2人の姿を見て、騒然としていた。
「技術庁局長って、【柘榴の騎士】アルマンダインさんか?」
「局長クラスの試験官なんて聞いたことないぞ?!」
「と言うよりも負傷者多数なのにどうするんだ?」
騒つく会場の中、アルマンダインはツカサを放り投げると続けて声を上げた。
「一次試験、奇襲によって負傷した者全て不合格だ。俺は結果主義でな、帰れ。それと今、俺の攻撃を避けた、もしくは防いだ。もしくは、コイツみたいに攻撃を行おうとした奴ら。全員、合格だ。次の試験会場に移る」
アルマンダインの一言で更に会場は騒ぎになるとブーイングが鳴り響いた。
「こんなのが試験な訳あるか!」
「そうだ! そうだ!」
「試験ってレベルじゃねえぞ! オイ!」
「それは許されねえだろ!」
「何が技術庁だ! ボッタクリ!」
「俺、今日まで頑張って来たんだんだぞ! 金払えよ!」
憤りから、関係のない罵声まで様々な声が上がる中、ツカサはアルマンダインに視線を向けると批判の対象となっている男は一切、動じていなかった。
(あれだけの敵意を向けられても一切、ブレさせないとはやるな、アルマンダインとやら)
批判の勢いが上がる中、アルマンダインは壊れた講壇を分けて、【探索者】達の目の前にたった。
威圧感のある強面と、筋骨隆々でありながら腕の全てに至るまで凡ゆる箇所に切り傷が刻まれたアルマンダインを前にして、批判をしていた【探索者】は気圧され、黙ると彼は再び口を開く。
「批判、罵倒、大いに結構だ。だがな、WDGが求めている一級【探索者】の器に至れていない、自分を見直そうとしたヤツは居ねえの?」
アルマンダインの一言に納得が行かない数人の【探索者】が前に出て、彼の前に立つとその1人が喋り出した。
「いや、器が足りてるとかは別にして! チャンスを勝手に潰された事に俺達はキレてんだ! これで一次試験は終わり? 偶然、後ろにいた奴らが前にいた奴らの動きから察して動けたのかもしれないだろう! これはあまりにも意味のない試験だ! こんな事、前代未聞! WDG本部に訴えてやる!」
その言葉に辺りは「そうだ! 訴えてやる!」と同調をはじめるもアルマンダインはそれらに臆する事なく、応える。
「訴えろ。俺は別に裁判でもなんでもやる。だがな、ここで批判をしようが俺は一次試験の結果も内容も変えない。WDGが定める一級【探索者】に凡人は要らないんだ。一級【探索者】とは、WDGの主戦力で、それに伴う覚悟と実力が無ければ必要ない、俺はそう考えている。だが、お前らがそこまで言うのであれば、かかって来い。誰か1人が一太刀でも俺に傷をつけられたら一次試験を突破させてやる」
アルマンダインはそう言うと拳を構え、彼らに向けて、手を前にして挑発をした。
「な、舐めやがって!」
「何が技術庁だ! 打ちのめしてやるよ!」
「全員でかかれば余裕だろ!」
「遠距離準備! やっちまおうぜ!」
この場に集った【探索者】は100人ほど、その内、アルマンダインの奇襲を乗り越えたのは30人ほど、70人の【探索者】を前にして、彼は笑いながら言い放つ。
「少しばかり、広い場所に移動しよう。全力を出したいだろう?」
パチリと指を鳴らした瞬間、アルマンダインと70人の【探索者】が姿を消し、ツカサは急に人が居なくなった事に目を丸くした。
「そりゃ、あんだけの人間が消えたらビックリするよな、ツカサさん」
「皆は何処にいったのだ? ゴトー」
「さあね。でも、WDG本部の訓練場だと思うなー。それにしてもあれだけの数を移動出来るなんて、WDGの技術ってのは思ったよりも発展してるな」
ツカサはアルマンダインの戦う姿を見かかったなと考えるもゴトーに再び別の話題で話しかけると会場で時間を過ごす事になった。
***
アルマンダインと移動させられた70人の受験者達はいつの間にか別の場所に来ていた事に戸惑っていた。
「70対1。ハンデとしては丁度いいか? オイ、お前ら、かかって来い」
アルマンダインだけが既に戦う準備を整えており、それに遅れを取りながらもその場にいる全員が自身の得物を手に取った。
そして、一切にその得物に向かい、自身の【
「「「「「「「
70人の多種多様な【
「
70人からの一斉掃射をアルマンダインが作り出したガーネットの槍が地面から突き出し、相殺する。
アルマンダインの【
指につけている
「
今度は視界が砂埃で遮られた状態から、70人の目の前に現れたのはガーネットにより生まれた巨大な獅子の顔を模した拳が振り下ろされると突然の事で反応が遅れた者と避けれない者達が下敷きになった。しかし、それだけでは終わらず、地面にアルマンダインの拳が叩きつけられた瞬間、獅子は咆哮を放つ様に自らの口を広げるとガーネットの槍が再び地面から現れ、受験者達を襲う。
二度の攻撃によって、既に半分以上が戦意の喪失と負傷により、倒れているがそれでも諦めない数人かがアルマンダインに攻撃を放つもそれらは全て弾かれた。
「な、何なんだよ!? あれは!」
アルマンダインへ向けて攻撃を放つもそれら全てが壁の様な物に阻まれると彼は一歩、また一歩と受験者達に近付く。
アルマンダインの作り出すガーネットは一定の間に粉々に砕け散る。だが、その破片はアルマンダインの操作の範囲にまだ、入っており、二度の攻撃によって生まれたガーネットの破片が受験者の攻撃を阻み、彼を傷つけることを許さなかった。
「
間合いに入った瞬間、アルマンダインは容赦なく攻撃を放つとガーネットが受験者を襲い、傷つける。
残った受験者の意識を奪い、その場にはアルマンダインだけが残っていた。
「これが一級【探索者】という者だ。まだ、やる気のある奴は出直せ。機会はある。それまでに自身に足りない物を見つけて、己を磨け」
アルマンダインはそう言うと受験者達の目の前から姿を消した。
***
この直後、フギのスマホに一通のメッセージが届いた。
「訓練場に受験者を送り返した。負傷者多数、処置頼む」
アルマンダインから連絡を受けたフギが訓練場に向かうとその場に倒れている70人を見て、ため息を吐く。
「あー、もう、あの人、何歳になっても大人気が無いんだから」
フギはそう呟くと手が空いている人々を呼び出し、訓練場に倒れた人々を病室へと連れ出した。
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