天国

葛籠澄乃

全1話 朝日

 あ、朝。開けっぱなしだった窓から、朝を知らせる爽やかな風と、柔らかな陽光が差し込んできた。わたしの手は、霞んでいる。


 真っ白で構成された部屋に足を付ける。ひんやりとした床が心地いい。しゃくり、と音を立てながら、焼けたパンを頬張った。ペットボトルから注いだアイスコーヒーで、頭がだんだんと冴えてくる。


 ふぅ、と一息。窓の外に視線を向けた。


 青空と白浜。青い海と白い雲。こんな幸せでいいのだろうか。わたしはかつてないほど、穏やかな気分でいる。頭はこんなに冴えているのに、目の前がこんなにも霞んで見えるのはなぜだろう。


「おはよう」


 わたしより早く起きたか、遅く起きたかわからないあなたが声をかけてきてくれた。あなたの顔も、少し霞んでいる。

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天国 葛籠澄乃 @yuruo329

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