詩「夫婦位牌」
金子よしふみ
第1話
父が亡くなり
初めて夫婦位牌というものがあると知った
仏具屋に母の戒名がある位牌と
父の戒名のある木の位牌を持って行った
老齢な受付の女性が受付表に記していく
慣れた様子だ
私には初めてのことでも
彼女にとっては日常的なことなのだ
一週間ほどで出来ると聞いて帰る
木の位牌をもう一度仏壇に戻す
「父ちゃん、母ちゃんと同じ位牌に名前書いてもらっとるからね」
泣けてきた
こんな言葉を言うだけで泣けてくる
どうしてこんなに泣けてくるのか
理由は介護をなんだかんだで十三年やりくりしたから、と言えばそうなるだろう
今はただ母と父の戒名が並んだ位牌ができあがるのを待つばかりである
位牌ができたと電話がありさっそく受け取りに行った
家に帰ってから仏壇の前でまじまじとそれを見つめた
母の横に父がいる
戒名の並んだ位牌を置いた
なんだかほっとしたような気持になった
涙はでなかった
昼過ぎて買い物へ行ってさんまの蒲焼の缶詰を買って供えた
父が好んでいた魚だ
合掌をした
魂入れの日を待ちながら
詩「夫婦位牌」 金子よしふみ @fmy-knk_03_21
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