第5話 辺境村46と黒猫

 エリザが界霊の聖女となり、辺境村に魔物除けの結界が張られた。

 母上が、女神アマルナから与えられた課題には辺境村の拡張がある。

 辺境村の村人の数は46人…辺境村46って、多人数アイドルグループかよって最初は思ったね。

 アイドルグループなら多いのだろうが、生活共同体としてはヤバいだろ。

 なので、村の人数を増やすことが喫緊の課題となっている。

 父上は、夫婦の営みの回数を増やすとかいうおバカな意見を村の会議で発言して、母上にぶっ飛ばされたらしい。

 女神様から近隣の他種族との共存も視野に入れる旨の神託があったため、村で検討されたが言葉が通じないというハードルで暗礁に乗り上げた形だ。

「異世界の他種族か!会ってみたいなぁ」

と、考えた僕はミレイに作った女神像の簡易版を量産している。

 なぜかというと、複製スキルのレベルアップを狙ってなんだよ。

 現状、貸与スキルを使って一般スキルを貸し出すと、一定期間そのスキルが僕の能力から消失した状態が生まれてしまう。

 例としては、魔法スキルを妹のミレイに貸し出すとレベルは上がるが、その間僕は魔法が使えなくなる。

 魔法が使えないと何かと不便でしょうがない…そこで複製スキルをレベルアップさせたら、スキルを複製出来るのではないかと考えた訳だ。

 スキルをレベルアップさせるには、ひたすら使うことにより練度を上げるしかない。

 それに女神アマルナの認知度を高めるには女神像はうってつけで、村人達からの要望も多い…だったら簡単に作れる簡易版を量産するしかないでしょう。

《複製スキルのレベルが向上しました》

 良いタイミングで、ナビちゃんからの報告が入った。

「魔法スキルを複製して」

 さっそく試しに言ってみると、

《魔法スキルの複製に成功しました。複製魔法スキルを貸与しますか?》

と、返って来る。

「母上…聖女エリザに貸与して」

《了解…聖女エリザに複製魔法スキルを貸与しました》

「やったー、これで効率よくスキルのレベルアップが出来る。他種族訪問に近付けたよ」

 ついでに黒猫を飼ったおかげで得た使役スキルを複製して、村のテイマー職の人に貸与した。

 聖女となり結界魔法を駆使している母上ほどのレベルアップは見込めないだろうが、オリジナルスキルと複製スキルのレベルを合算すれば良い数値になるはずだ。


「ニャー」

 僕の膝の上で、くつろぐ黒猫があくびついでに鳴く。

「黒猫ちゃんの鳴き声を翻訳出来たら、他種族の人とも話せる様になったりしないかな」

「ニャン?」

 小首を傾げる黒猫…あざとかわいいじゃないの。

 この世界には、人間族の他にエルフ族やドワーフ族・獣人族・鬼人族・亜人族・竜人族などがそれぞれのテリトリーで暮らしている。

 進化の過程で動物からヒト型へと変化して各々の言語と文化を有し、動物や魔物とは一線を画す存在である。

 創造主の女神様への信仰は不変のものがあるのだが、認知度が低下している事が他の種族でも問題となっていそうだ。

「だけど女神様の神託にもあるけど、辺境村の発展のためにも他種族との共存は必要なんだよなぁ」

 黒猫の毛並みを整えながら誰にでもなく呟くと、

《翻訳スキルのレベルが向上しました》

と、ナビちゃんからの報告が入った。


「えっ?別に誰とも喋ってないんだけど…」

「我に話しかけていただろう」

「……黒猫ちゃん?」

「黒猫ではない。我こそがアマルナ女神様の使徒、聖獣レパードである」

「翻訳スキルのおかげなんだろうけど、今の会話ってニャとかニャンとかなの」

「気にすんのそこか?この土地を長年、守護して来た聖獣様と喋れたことにもっと感動したらどうだ」

「そこは別に…熱いのいらないんで」

「最近の若いヤツは冷たいの。ん?なんとなく女神様に忘れられてた気がするんだけど、我の熱いトコが面倒くさいとかじゃないよな」

「ないない。そんな事ないよ…多分」

「テキトー過ぎないか」

「まあね〜」

 僕と聖獣レパードは笑い合う。

「ところで、レパードってヒョウのはずなのに何で黒猫なの?」

「本来の聖獣の姿でいたら、せっかく解放した土地に誰も寄って来ないだろう。遥か昔に身の程をわきまえぬ国を滅ぼした事もあるから、怖がらせない様に我も気を使っているのだ」

「それじゃ、ホントはもっと大きくて強いんだね」

「まあな…我、聖獣じゃけん」

「不器用そうだもんね…硬派で熱くてめんどくせ〜って感じ」

「アキノよ、我のことディスってるだろ!」

「そんなことないっすよ。リスペクトしまくってるっす」

「急に、馴れ馴れしい後輩にキャラ変するな」

「偉大なパイセンは、いつの時代でも憧れっすから」

「まあ、悪い気分はしないな。ところで他種族交流の目処は立っているのか?」

「どこに住んでいるかもわからないし、言葉も通じないらしいからお手上げ状態だね」

 僕の膝の上に座りながら聖獣レパードこと黒猫ちゃんが、

「はぁ…ナニ言ってる?聖獣の我と喋れている時点で、翻訳スキルは上限値レベルに達しているだろ。下位種族となどペラリンチョだぞ」

と言い、猫なりの呆れ顔を向ける。

「ペラリンチョなんだ!」

《翻訳スキルはカンストしているので、どの種族ともコミュニケーションを取れます》

 ナビちゃんからの報告で、高かったハードルを1つクリア出来た事がわかった。

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