最弱スキル『他力本願』だけで異世界を蹂躙する
@ikkyu33
他力本願、それは無力にして最強
気づけば、そこは真っ白な空間だった。
浮遊感も、重力もない。ただ、自分が存在しているという感覚だけがやけに鮮明で、まるで夢の中のようだった。
「お目覚めかな?」
不意に響いたのは、穏やかでどこか気品を帯びた声。その声に振り向くと、そこには人とも神ともつかぬ存在が立っていた。銀髪に金の瞳。背中には光の翼。浮いているのに立っているような、不思議な存在感。
「……えーと、あなたは?」
「我は“選定者”。この世界と、君が向かう世界の狭間に存在するデミゴッドのようなものだと思ってくれていい」
「つまり……異世界転生、ってやつ?」
「うむ。正確には“転移”だが、大体合ってる」
ぽかんとしていると、デミゴッドはひとつ頷き、続けた。
「君の魂は選ばれた。向こうの世界では、混乱と破滅が進行中でね。だから、異世界からの“起爆剤”が必要だった」
「起爆剤って……そんな大層な……。俺、ただのニートだよ?」
「その“ただのニート”に授けられるスキルが、これだ」
デミゴッドが手をかざすと、宙に光る文字が浮かび上がった。
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**スキル:《他力本願》**
分類:ユニークスキル
効果:自分以外の力に全てを委ねることで、成果を得ることができる。直接攻撃・魔法の使用は不可。
補足:スキル発動対象となる“他者”の力を引き出し、状況に応じた最適解を導く。
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「……えっ、これ、弱くない?」
「そう思うかもしれないね。でも、“他力本願”は本来、無限の可能性を秘めている。なぜなら“誰かの力”を無制限に借りられる、ということだから」
「誰かって……?」
「君が出会う者たちだ。味方であれ敵であれ、彼らの力を“結果”として引き出せる。君の意思さえあればな」
「……よくわからないけど、面白そうではあるな」
デミゴッドは満足げに微笑むと、手を振った。
「では、そろそろ時間だ。君の行き先は“アーセル王国”の王都、アルトリウム。運命はもう、動き始めている」
「ちょ、待っ――!」
言葉を遮るように、視界が光に包まれる。
次に目を開けたとき、主人公は人々の喧騒と石畳の上に立っていた。高くそびえる城壁、行き交う兵士と商人、異世界の空気が肌に触れる。
異世界生活、開幕。
そして、最弱のスキル《他力本願》による、世界蹂躙の物語が――ここに始まる。
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