第2話
つい先ほど俺は気づいたことがある。
そう、俺は赤ちゃんだということに。
思えば、意識というものがある事を自覚する前の俺は、自分自身の状況が分からず、とにかく混乱していたんだと思う。
今までの間に、ゆっくりと自分というものを自覚したきたが、最初は何も聞こえないし、何も見えなかった。
光は感じるし、ぼあぼあと、音の様なものは聞こえていたが、久しぶりに感じた体の重みに、心は嬉しさを覚えたことは何となく覚えている。
ただ、見えないこと、聞こえないことの不安と恐怖でいっぱいだった。
手足も思うように動かず、色んな気持ちでグシャグシャになり、多分俺は、たくさん泣いていたんだと思う。
そんな時は、いつも温かく、何かに優しく包み込まれて安心し、そして、いつもすぐに、眠くなって寝てしまっていた。
そんな日々を繰り返していたら、ゆっくりとではあるが自分という意識もはっきりしていき、少しずつ、世界が色づき始め、ゆっくりと視界も広がっていった。
耳も同じく、ぼあぼあとしたものしか聞こえなかったが、徐々に音を拾っていき、だんだんと、知っている音へと近づいていった。
だが、体の方は全然、全く思うように動かなかった。
というより、自分で動かすのではなく、勝手に動く。動いちゃうのだ。
その状態は、今思うと、ちょっとだけ前世の記憶があるせいなのだろうが、どうにも我慢できなかった。それは今もハッキリと覚えている。
だが俺は、諦めず、ぐーぱーしたり手足を思い切り動かしてみたりと、己に負けないよう、色々とチャレンジを繰り返していった。
…ちなみに排泄事情は、体が思うように動かなかった。ということで察してくれ。
食事は一言で言うなら美味かった、だな。
うん、俺は赤ちゃんだしね。
とにかく、飲む、寝る、出す、起きる、合間に動く練習、全部全力でやらなければ、出来ないことばかりで、その後は、すぐ寝てしまう。
何かを考えたり、顧みる余裕は一切なく、1日1日をただ、頑張って生きていく、少しずつ出来ることを増やしていく。
そんな時に、ふと、自分が男である事に気がついたりもした。
なぜかとても嬉しかった。
そして今日。俺はついに何かに掴まれば歩けるまでに成長した。
ついにやったぞ!と、俺はきっと喜びで満面の笑みを浮かべているに違いない!
両親もものすごい勢いで喜び、そして褒めてくれてくれた!ありがとう!父さん母さん!
「あぃー、まんま、ぱっぱん、あー」という感じで、うまく発語出来てはないが、こちらもすぐにマスターしてやる。
そして…俺は気づいたのだ。
あれ、俺、赤ちゃんじゃね?と。
ひとしきり喜んだあと、ふと冷静になって自分自身を思い返してみたら、赤ちゃんだったことに気づいた訳なんだが…。
毎日一生懸命に生きていたから全然気が付かなかった。
父さんと母さんのことも、自然と親だと認識して当たり前のように受け入れてたし。
そういえば確か神様とも話した(?)んだよな。
あれは多分夢じゃないはず。
あの神様があの時、送ってくれたおかげで俺が生まれたんだろう。
だけど、神様、なんか最後不穏なこと言ってた気が…。
『不具合』『サーバー停止』…うっ!なぜか頭に浮かぶ言葉…。
嫌な思い出が…!
…思い出せ…ないが、これは忘れた方がいいヤツだ、うん。きっとそうに違いない。
神様の言葉は気になるが、考えても分からない事はもう考えても仕方ないだろう。神様も最後笑ってたから大丈夫だろう。
それはそれとして、前世の記憶について思う。
記憶は確かに、あるにはあるが、うっすら過ぎて、このままだと忘れそうな気がするな。
忘れてもいいのだろうか。
生まれて初めて自分を顧みたら、頭の中で色々と繋がっていって、また一つ、俺は自分という存在意識が芽生えた気がする。
ただ、疑問やどうしたらいいのか分からない事も多い。
まぁ、どうすればいいか分からない事は未来の自分がどうにかするだろう。
今はもうそれでいい事にしようじゃないか。
うんうんと、ずっと考え込んでいると、ふと、視線が気になり、両親を見上げる。
己を顧みていた俺を、面白そうに見つめて、楽しげに二人で会話していたようだ。
うん。仲良しだ。
俺の視線の先にいる両親は、優しくてとても良い人だと思う。
俺自身、今現在、父さんのことも、母さんのことも大好きだ。
今、俺の両親が、何か楽しげに何か会話をしているが、それが何と言っているのか、言葉は全くもって分からない。
というか両親の名前も分からない。
ママ、パパって言葉だって、自分のこと指さして言いながら、俺に言わせようとしてたのを見て、俺もそれを覚えた感じだからな。
一応、あれが名前かなって思う言葉はあるが、まだ確信はない。
よし、そうだ、これからは言葉をもっと覚えていこう!
そして、掴まらずに歩くのが次の目標だ。
目標が決まれば自ずとやる気が出てきた!
おっとっと、危ねぇ。コケるかと思った。
しかし、頭が重いし、手足短いしで、歩くのがこんなに大変だったなんて思わなかったなぁ。
確か前世の本で、前世の記憶があると、無双出来る?とかなんとか…習った気がする。
確かに上手く行きそうだな、とは俺も思うのだが…。
これは上手くいってるってことでいいのか?
俺は、自分の状況、色々と気づいたのさっきだったもんなぁ。
俺が前世をうっすらしか覚えてないことが問題なんだろうか?うーん…。
まぁ俺は俺だしな!
うん、そういう事にしようっと。
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