第六話 六甲祭


承前


1980年代神戸



僕は神戸大学の教育学部の二回生だ。


一回生の夏

今の大学で在席しているSF同好会が

「神戸SFフェスティバル」というコンベンションを企画して

色々あったことは前に話した。


顛末として最後はグダクダになったが概ね好評をいただいて

アフターレポートも発行し

収支計算書も計上して

会計担当の僕の責任も終了した。


せっせと稼いだ裏金で

本来所属している心霊現象同好会の打ち上げが

北野坂の中華料理屋で執り行われた。

相棒の久保田が学生結婚をしたので

その披露宴も兼ねた。

彼女側のテニス同好会も呼んだので

さながら会場は巨大合コン会場となってしまった。


あれから朱美先輩は薫先輩とべったりだ。

カミングアウトしたので他の女子は寄せ付けないわよとのガードの固さが

ちょっと鼻につく。

心霊現象同好会の男子は薫先輩の親衛隊も同然なので本来なら波風が立つのだが

目の前の活きのいいお魚を釣ることに必死なので…

今日のこの日は黙認だ。

逆にテニスサークルの女子が薫さんに行かないことがありがたいのかもしれない。


僕といえば胸中はかなり複雑ではあるのだが…


そういえばもう秋である。

秋であれば学園祭だ。


僕らの大学は山の上にあるので模擬店が雨で畳むと麓のコンビニまで食料を調達

しなければならない。

できればそれは避けたい。

来場者の胃袋を満たす模擬店の存在は他の大学より重要となってくる。

特に入口の階段から上がって本堂の教育学部と記念講堂の目抜き通りの争奪戦は

凄まじく、前年の売り上げベスト10が軒を占めるのでここに店を出すことは

学内のイベントヒエラルキーのトップに君臨したという「誉れ」となっている。


という事でSF同好会のヤキソバの模擬店はイベント特設会場といえば聞こえは

いいが入り口から一番遠い運動場の入り口に配置された。

でも腐ることはない。イベントさえ盛況ならば単価の安いヤキソバの売り上げは

凄まじくなる可能性は…大いにある。

うまくいけば来年の目抜き通りを狙える可能性だってあるだろう。

会長の紙くんの獅子奮迅の働きはまた別の話…


ボードゲーム同好会はいつもの教室でボードゲームの試遊会だ。

208号の教室は中規模の広さで高校の一般的な教室を思い浮かべていただければ

それに該当するだろう。

向いの207号室は階段式の教室でいかにも大学の教室でございという間どり

一番古い本堂の中でこの構えは設立当初は画期的だったのではないだろうか?

例年ここは「クイズ同好会」の縄張りで一セット10万円の早押し装置が鎮座し

回転率が凄まじい人気の企画になっている。

そのおこぼれを拾う形のボードゲームの試遊会だ。

この頃はゲームといえば人生ゲームかバンカース、トランプしかなかった頃だ。

しかし我々はボードゲームの最先端を走っている。

アメリカのアバロンヒル、SPIの5000円もするファミリーゲーム

「スクイント」「シェークスピアボードゲーム」「タイタンの掟」「アクワイア」

などの今現在でもなにを題材にしたかわからないマニアックな品揃えをメインに

「ガチョウゲーム」「ヘビと梯子」「パリ万国博覧会」などの超アナクロな

ヨーロッパの古典ゲームを取り揃え

チェス、バックギャモン、マンカラ、クリベリッジなどのド定番も用意している。

もちろんファミリー向けに「ドラエモンのドンジャラ」「UNO」「ペトロポリス」

も忘れていない。

これだけ揃えればお子様を連れたファミリー層にガッチリ訴求してくる。

雨など降ろうものなら模擬店、屋外企画が全部なくなるので超人気企画に昇格する。

例年、雨になると30分の時間制限を設けるくらいで部員全員がインストでトイレ

に行けなくなるほどだ。


我々心霊現象同好会はベタだが「お化け屋敷」と「怪談の公演」をやっている。

まあみなさんも学園祭の定番なので経験もおありなのだか迷路を教室の中に作って

要所要所に化け物のメイクをした部員が驚かすアレだ。

普通はドラキュラとかミイラ男とか白装束の女の幽霊なのだが…

僕らは変に凝り性なので「青坊主」「わいら」「屏風覗き」「枕がえし」など

中々マニアックな妖怪を出してくるのでアンケートをとると

あのへんなダチョウみたいな妖怪なんなん…

尻から目玉出ている黒いヤツがきもすぎると

やはりポピュラリテイ・普遍性は大事なのかなと、一応は反省はするのだが…

またぞろやってしまうのである。


怪談の公演の方は「セカイのイナガワジュンジ」がまだブームになる前なので

落語研究会の先輩を引っ張ってきて「飴幽霊」「死神」などの古典を一席もって

もらったりした。

これもそれなりに人気になっていた。もう秋なのだが我が大学の定番になりそう…


学園祭からそして三日後

朱美先輩から

所属している演劇部を手伝ってくれとの要請があった。

自由劇場・ジゲキは12月の公演のため折角の六甲祭に出し物はなかった。

去年の不祥事のせいだ…

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