異世界で国を作りたいと思います

your clown ユピエロ

第1話 旅立ち

目に光が差し込んでくる。

意識を徐々に覚醒させると今まで見たことのない天井が俺を迎え入れている。

あれ、俺は死ねたんじゃ無いのか?


「貴方、アーサーが目を開けたわ」


聞き覚えの無い声が俺の鼓膜を揺らす。

まだぼやけている目を凝らして見るとそこには美しい白髪の女声がこちらに目をよこしていた。


おかしい。俺は確かに部屋で練炭を炊いて首を吊って死んだはずじゃぁ。

死というものに興味が湧いて死んだのに第二の人生なんてこれじゃつまらないな。


「おお、大人しい子だな。生まれてすぐだったら泣きわめくもんだと思っていたが」

「確かに産声を上げて無いわ、息が出来ているのかしら」


どうやら俺は赤ん坊でこの二人の子供らしい。

最近マンネリ化してきた異世界転生とやらか。どうせならもっと人間じゃ無い生物に転生したかったな。そもそもそのまま意識がなくなっても良かったけど。

この日から俺は異世界で第二の人生をアーサーとして生きるようになった。



_____



「アーサー今日の勉強は終わったの」


キッチンから母の呼び声が聞こえてくる。

こちらの世界に来て約14年ほどの月日が立って居た。


「終わったよ」


こちらの世界での成人は江戸時代と同じで男性15歳、女性は13歳からとなっていた。つまり後一年で成人というわけである。

なので俺は勉学と異世界では必須の魔法と武器の取り扱いを学んでいた。


「アーサー勉強が終わっているならこっちを手伝ってくれ」

「はい、今行きます」


こちらの世界での生活は現代日本と比べて生活の質は悪いが自然豊かで住みやすかった。しかし国の政治制度や国家間での貿易はてんで駄目でありすぐ滅亡するのは火を見るより明らかだった。

来年成人する身からするととてつもなく不安だ。


「なぁ、アーサー」

「何、父さん」

「お前も来年で成人だ。だから何の職業をやるのかと気になってな」


成人したら何かの職につかないといけない。貴族や王族は違うが一般時の俺はもちろん働かないと生きてはいけないのだ。


「そうだね、僕は冒険者になった後途中でやめて余生でも楽しもうかな。もしかしたら国でも作るかも」

「そうか、なら準備は怠るなよ。油断は死への招待状だからな」

「妙に深いね」

「そりゃあちゃんと考えて言ったからな」


二人で話しながら作業を終えていい匂いがしてきたリビングへと向かう。

残り一年大切な時間になるようにしよう。





_______



「アーサー、準備はできてるの」

「うん、母さん出来ているよ」


今日で晴れて俺は15歳。

今日で両親の元を離れて俺は自分の人生を歩みだす日だ。


「じゃあ行ってきます」

「おう、行って来い」


感動の別れでもないがこの世界でお世話になった親に別れを告げて馬車に乗る。

ここから約半日移動して近くの街、ウェートに行って冒険者ギルドでライセンスを貰うつもりだ。

そんなこんなで俺は馬車に揺られながらウェートに向かった。


ウェートに向かっている途中馬車が止まり前へ進むことができなくなった。

不思議に思い荷代から降りて運転手に何があったのか聞こうとするとそこには一人の奴隷の首輪をつけた青年が倒れていた。

髪は黒く肌にはいくつかの擦り傷や痣が見受けられる。年は俺の年齢より少し上だろうか。

そう考えていると彼は俺の存在に気づいたのかこちらを見るなりいきなり襲ってきた。


「ふん」


がむしゃらに向かってきたので一歩横にズレて手を元いた場所に置く。

すると案の定彼はぐったりとして眠ってしまった。

かなり体を無理して酷使したのだろう。

流石にこのまま放置は可哀想なので馬車の荷台に乗せて日持ちのするパンをバックから取り出す。

木のボールにパンを乗せて置けば起きた時に勝手に食べてくれるだろう。

俺はそうしてウェートに着くま奴隷の首輪をした彼に対する質問を考えるのだった。



ウェートに着いても奴隷の首輪をした少年は起きなかった。

困ったな、この後は宿に行って荷物を置かないと行けないのに彼がいるせいでこの場から離れられない。

しょうがなく無理やり起こすために胸ぐらを掴み軽く揺らす。


「ん、ど...こ」


起きてくれたので早速本題に入ることにする。


「此処はウェート、君は道端で倒れていたから此処まで運んできたんだよ。早速で申し訳ないけど此処で15分ほど待っていてくれるかい、別に待たずに消えてくれてもいいけど」


言葉は話さなかったが頷きに取れるような仕草をしたので俺は宿に向かう。

すると何故か彼も着いてきた。

いやなんでだよ。


結局宿にまで着いてきたのでそのままチェックインをする。

彼が隣にいたせいか他の客からの目線が集まってしまった。それに宿代も倍だ。これは早く冒険者となってお金を稼がないと行けないだろう。

こういうのは嫌いなんだけどな。

とりあえず宿の部屋に移動して目線からのがれて俺は疑問としていたことを奴隷の証である奴隷の首輪をかけた青年に話をきてみることにした。



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