弱者な勇者
@potato926
第1話
「ギィ...ガコン」
それは魔王が数百年ぶりに棺から目覚めた音だった。
そこは魔王城の中心地、誰もが恐怖を抱くような風景であった。
その人は、いやその魔の者は出会った瞬間、恐怖のどん底に引きずり落とすような圧倒的な力とその風貌をした魔の頂点に達するものであった。
「タッ...タッ...タッ...」
彼は情報や状況確認のためあたりを見渡している。しかし、そこには魔王を守るため片時も離れてはならない四天王がいないではないか。
「フハハハハ...奴らめ、地獄の果てまで恐怖で恐れおののくがいい。」
突然、懐かしい気配を感じ取った。
「魔王ヴィルヘイユ様、お目覚めになられましたか。このメンター、恐悦至極に存じます。」
メンターは四天王の一人であり、魔王の右腕のような存在である。
「おお、メンターか貴様何処へ行っておった。前勇者にぶちのめされた恨みを今勇者にぶつけてくれるわ。悔しいがやつは余をはるかに凌ぐほどの強大な力を持っていた。」
「魔王様、一つよろしいでしょうか」
「なんだ」
「非常に申し上げにくいのですが. . . 今の勇者は. . . 端的に言えばくそ雑魚勇者であります。」
「な. . . なんだと、どういうことだ。」
「言葉どうりでございます魔王さま。勇者があり得ないほど弱く、もろく、勇者なのに勇者としての素質が全くないのです . . .なので、四天王総出で勇者を鍛えております。」
「は? 」
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ーとある訓練場にてー
「どうした!そんなんじゃ魔王どころか、そこらにいるゴブリンどもにも八つ裂きにされるぞ!」
「くそっ、ちくしょう」
「どこねらってんだ。ちゃんと姿勢を正して脇をしめて素振りをしろ。最初は大きく振って体に覚えさせろ。」
「だめだ、丸太に全く当たらない。やっぱり無理だよ先生」
「おいこらぁ。弱音を吐いてんじゃねえ!」
僕は勇者セイク。魔王を倒すために日々訓練をしているところだ。
しかし、この人はある日突然僕の家に駆けこんできて家庭教師になると言ってきたんだ。名前は教えてくれないらしい。名前がないと不便なのでケンさんと呼ぶことにした。
「僕は勇者だ、こんな訓練なんてしなくても魔王なんて簡単に倒せるよ」
「は?お前何言ってんだ?」
「え?」
「お前は勇者である前に、一人の人間なんだよ。お前がいくら勇者でも、剣も振れない、魔法も使えないんじゃ魔王なんておろか、魔族すら倒せないに決まってるだろ。いいか、人間と魔族はな体のつくりが違うんだよ。やつらは人間の何倍もの筋肉密度で体が構築されているんだ。だから根本から間違ってるんだよ。魔法も剣も使えなかったら蹂躙されるだけだ。」
「そ、そんな」
「だから、こうやって俺が直々に稽古つけてやってるんだろう。感謝しろよ。」
「でも、僕もう疲れた。休憩したい。」
「はぁ、しかたねえな」
「では、わたくしが魔法の訓練をして差し上げましょう。」
彼女はケンさん同様つい最近僕の家に押しかけてきて魔法の先生になってくれるそうだ。でも、名前は教えてくれないのだ。彼女もマホさんと呼ぶことにした...どうにもきな臭い。
「今日は、初歩的な魔法のおさらいをしましょう。まず、魔法を使うには魔力が必要です。」
「でも、この間も言ったように魔法が使えないんだ。」
「大丈夫、魔力を理解するには時間をかけてゆっくりと感じていけばいいのですよ。ただ、今はどのような魔法があるのか、補助するのか、攻撃するのか、勉強していきましょう。」
「わかりました!」
「魔法は大きく二つに分けられます。内在するものと外面的なものです。内在するものは己の中で魔法を使うことです。例えば、自身に強化魔法をかけること。外面的なものは自分の外側で魔法を使うことです。例えば、炎を出したり、相手に補助魔法をかけたりすることです。」
「ふむふむ、なるほど」
「まぁ、ここら辺は本を読めば詳しくわかりますが、要は自分にかける魔法と他者にかける魔法ということです。さらに細かく分類されていますが、今は一番違いが分かりやすい攻撃魔法を見てみましょう。これが」 ファイヤーボール
マホさんがそういうとボウっと炎が出て、先ほど素振りをしていた丸太にあたった。高温度に熱しられた炎は丸太の中に入っている水気などお構いなしにドロドロに溶かしてしまった。
これが魔法か、すごいな
「っと、こんな感じです。きちんと復習と予習をしておいてくださいよ。」
「わかりました。」
「では、私たちはこれで失礼します。」
「おい、セイク、ちゃんと練習しておけよ?」
「はい、ありがとうございました。」
タッ...タッ...タッ...
「結構離れたな、じゃあ魔王城に戻るか。」
「ええ、そうしましょう」
そういうと彼らはブオンという音とともに消え去りました。
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ー魔王城ー
ブオン
「ぉお、魔王様ついにお目覚めになられたのですか。」
「お久しぶりです。魔王様。」
「ジェントにミスか」
「もうご存知かもしれませんが、我々は勇者を鍛え上げています。その理由は勇者があまりにも弱くそこらへんに転がっている農民にも負けてしまうからです。そんな相手と戦ってもなんの面白味もない。なにより、虐殺や圧倒的力というのは我々の趣味ではない...そうですよね...魔王様?」
「ああ、その話はもうすでにメンターから聞いたが、本当だったんだな。」ーーー「というかおぬしらはどこにおったのだ。」
「はい、まだ勇者は一般人同士の喧嘩で負けるほど弱いのですが、必ずや魔王様が楽しめるような相手にします。」ーーー「我々は勇者の家庭教師ということにしております。」
「カテーキョーシ...まあよい。ゆけ!」
「はっ」
この先、いったいどうなることやら。魔王ヴィルヘイユはこれから強くなっていくと思われる勇者に心臓の鼓動が早くなるのを感じ、己のライバル誕生に胸を弾ませていた。
「いやしかし、よく考えれば、そもそも勇者は最初から魔王のライバルとなるべき存在だ!!なぜだ!なぜそんなにまで弱いんだ勇者よぉ!」
弱者な勇者 @potato926
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