第14話 僕が知っているのはそれぐらいです

『エゴ・リセット・プログラム』

 16歳になったときに一度だけ使える権利。自分をリセットして、再スタートできる制度と、僕は聞いている。


 それまでの自分を全てリセットする。


 いったいどうやってそんなことをしているのかまったくわからないが、人格も記憶も価値観もすべて消して、新しく上書きして、全く新しい、別の自分で新しい人生を始めることができるのだという。


 と、そんな当たり前のことを説明したあと、流離……さんは。


「んくく、んくく、んくく」

 と何度も言った。


 おかしいのか面白いのか、それとも馬鹿にしているのかわからないが。

 少なくともその顔は、興味をいだているようには見えなかった。


 無表情。

 眠りに落ちているかのように、顔が固まっている。


「……あの、聞いてますか?」


「聞いてるよ」

 聞いているらしい。


『エゴ・リセット・プログラム』ってどこまで知ってる? そう訊いたのは流離さんからだったので聞いていないと困るのだが。


「まあ、僕が知っているのはそれぐらいです」


 言い終わって、そういえば、『エゴ・リセット・プログラム』のことをほとんどなにも知らないな、と実感する。


 調べればもう少しちゃんとした情報がでてきたのだろう。学校でもちゃんと教えてくれたし、何度も学ぶ機会があったはずだ。

 説明会だってあった。

 相談会だってあった。

 日借が話してくれたこともあったし、クラスメイト達も、僕がそれを受けないとしっていながらも、嬉々として話してくれたこともあった。


 同級生だけじゃない。

 僕の両親だって、三人いる弟たちだって話題にしてきたことは何度もあったし、親戚の家でも僕を見るなりそれについて触れてきたりした。

『エゴ・リセット・プログラム』の話題はそこら中に転がっていたのだ。


 16歳という年齢は、それだけ大事なものだった。

 大事だいじで、大事おおごとだった。


 だが。

 僕は最初からそれを受けるつもりはなかったから、調べなかった。

 関係なかったから、興味がなかった。


「…………」


 そのせい――なのだろうか。

 こうなってしまったのは。

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