第17話 訓練開始

 俺からの願いをほとんどの悪魔たちは承諾してくれたが、怠惰だけは受け入れてくれなかった。理由を聞くと、『面倒』だそうだ。

 そうして次の日から訓練が始まった。


 特訓1日目午前


 俺の前にいるベヒモスはいつもより気合の入った声でいう。


「私から教えるのは権能とそれで得たものの使い方です。さあバシバシ行きますよ!」


 午前中は永遠と知識を叩き込まれては幻想体の訓練を繰り返していた。

 幻想体の操作はいわばゲームでキャラを動かすイメージ。幻想体を動かしながら本体を動かしているときは1人で2体を同時に動かしている感覚であり、非常に難易度が高い。そのためまずは幻想体を維持しながら自分の身体を自由自在に動かせれるようにする訓練をした。


 午後


 午後に現れた男は怪盗のような服装をしていた。


「それでは自己紹介から。私は《強欲》の大罪悪魔、マモンです。以後お見知り置きを。私からは主に剣術などの技量が必要なものを教えます。いくら悪魔王でありステータスが高くても技量がなかったら勝てる戦いも勝てなくなってしまいますからね。」


 その日から強欲の担当の日は地獄になった。ひたすら反復練習。体に叩き込み、マモンと戦うことの繰り返し。一番しんどかった。


 2日目午前


 今日の午前はルシファーが担当だった。


「王よ。王の体の使い方は無駄が多すぎます。ですので私からは体の使い方と格闘術を教えようと思います。」


 ルシファーは体の使い方を丁寧に、わかりやすく教えてくれた。自分で自分の技量が上がっている事がわかる。


 午後


 関西弁エセ関西弁を話す男が午後の担当だ。


「ワイからはスキルの有効的な使い方を教えたる。耳の穴かっぽじってよく聞きな。」


 アスモデウスからは自分が幻想体を使う上でのコツや、幻想体を使っている最中の本体の動き方などを教えてもらった。


 三日目午前


 貴族風な格好をした長い髪の男が現れた。


「俺は《嫉妬》の大罪悪魔、レヴィアタン。貴方には俺の権能を覚えてもらう。」


 ここ3日間で誰も俺に権能を教えてこようとしてこなかったが、とうとう教えてくれる人物が現れた。


「俺の権能は速めに扱えるようになると他の権能を扱う際にいいからな。それで俺の権能の能力なんだが…『己の感情によってあらゆるものに干渉が可能』というものだ。わかりやすく例えると、怒りで魔法の威力があがるとかだな。」


 なるほど、つまり主人公属性がつくってことか...強くね?


 それから色々と説明してくれたが、権能を取得することはできなかった。


 午後


 教えてくれる悪魔はこれで最後、最後の大罪悪魔は…


「私は《憤怒》の大罪悪魔、サタンです。以後お見知り置きを。私は簡単にできることから教えていきたいと思っております。」


 憤怒と聞いていてなんとなくとんでもない悪魔だと考えていたが、正直一番マトモかもしれない人物だった。


「では最初に壊しやすい骨の場所と、壊し方を覚えていきましょう。」


 前言撤回、とんでもない悪魔だ。



 ___________________________________ 


 以上のローテンションで俺の修行は続いた。そして4ヶ月ほどたった頃。

 その日はベヒモスの修行だった。


「だいぶ権能の使い方が良くなってきましたね。ではそろそろ使えるスキルを増やしに行きましょう。」


「つまり、何かを取り込みに行く。実戦をするってことか...」


「その通りでございます。王はあの深淵の神アビスを殺そうとお考えなのでしょう?それには必要なスキルもさぞ多くなると思います。そこで有用そうなのをこちらで何体か用意しておきました。今回はその中でも特に弱いものを取り込んでもらいたいのです。」


「自分で倒して取り込めばいいんだろ?」


「ええ、この4ヶ月で学んだことを活かせば難なく取り込むことはできると思いますよ?」


「だと、いいがな。」


 一体どんなスキルなんだろうか。楽しみだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

惟神 からすまる @karasumaru0135

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ