(4)零細と情熱のあいだ
彩香:時間軸のはなしがでたから説明するけど、わたしは最初、結香ではなくてかほの学生時代を書こうと思ったのよね。
結香:わたしの出番ではなかったのですか。
彩香:そうなんです。だけど、『あなたの知らない~』のかほは葛藤だらけで。学生時代の話を書くと「過去の幸せ」のストーリーになっちゃうかな、って思ったのね。だけど、わたしが書きたいのは「未来への希望」なんだと気がついた。
みき:おぉ!これは名言。「未来への希望」ね。
彩香:それで急遽、結香に「代打」で登場してもらったんだけれども、これはすごくいい判断だったと思う。
みき:それじゃ、次作は結香さんが「代打成功率」を分析するストーリーかな。
彩香:統計分析はもういいかな。
結香:わたしも。
みき:ところで、結香さんに聞きたいことがあるんだけど、今日もそうなんだけど、結香さんの着てる服、ふんわりとした女性らしい服だなっていつも思ってる。
結香:みきさんのユニセックスな感じの服も、元気に活動するみきさんの雰囲気にすごく似合ってるよね。
みき:それでも、わたしが結香さんの服で一番驚いたのは、わたしが働くことになる派遣先の担当者の結香さんがワンピースを着てたこと。ビジネスシーンでワンピースを着ちゃうんだって、ものすごく驚きました。
結香:そんな驚くことでもないでしょ。うちの会社が自由なのかもしれないけれど。自分が着たいものを着ると仕事に対しても前向きになれる。
みき:ほんと、結香さんは自分自身をしっかりもってるよね。結香さんのファッションセンスも確立してるし。
結香:センスについては結局、母の影響なんだと思ってる。
みき:大学生になるから、装いも新たにしなくちゃって買い物につきあってくれたんだったよね。
結香:いろいろ口うるさいから、わたしはちょっと苦手なんだけど。
みき:そういうのは誰にでもありますよ。そのほか、ファッションについてこだわりはあるんですか?
結香:ファッションは、どれだけアイテムを持ってるかではなくて、どれだけ実際にアイテムを組み合わせて楽しむか、だと思ってる。みきさん、今度一緒にショッピング行きましょ。
みき:ぜひお願いします。
結香:彩香さんもどうですか?
彩香:女3人いると派閥ができるから、わたしは遠慮しとくね。
みき:それから、結香の家族といえば、結香と
彩香:わたし自身、父との関係があまりよくないので、それで読み手には結香の父のことを魅力的と思ってもらいたいという意識はあったかな。
結香:でも、実際の父にくらべるとかなり「デフォルメ」されているんですよね。アメリカ研修旅行のときにも、帰りの空港に迎えにくるといっておきながら、日付を1日間違えて来なかった。それと。
みき:それと、って、あんまり夢をこわすようなこといわないでね。
結香:これだけはいわせて。父のこと、余計な荷物を抱えたような体型、というのはどうかな。実際の父はそんなに太くない。
彩香:あまり魅力的に書くとリアリティがなくなるので、そこはバランスをとったかな。「文学的作為」ということでゆるしてください。
結香:演出ならしかたないですね。でも、どんぐりころころのみきさんと違うことは、読み手のみなさんに知っておいてほしい。
みき:ちょっと〜、なにいってんですか〜。
結香:ほんと、くちびるがとんがっちゃったみきさん、かわいい。
みき:そろそろ予定しているインタビューの時間もおわりなんですが、最後に彩香さんに作品を書く上での心構えだとか、モットーについて聞かせてもらえますか。
彩香:あんありそういうことは考えないんだけど、しいていえば「零細と情熱のあいだ」かな。
みき:どういうことですか?
彩香:零細な個人の書き手でも情熱を込めた作品はかならず読み手に受け入れられる、という信念です。
みき:ちょっと冷静でいられなくなりそうな情熱的な信念ですね。
彩香:それと、今回このインタビューを受けたからには、みきと結香にお願いがあります。
みき:どういうお願いですか?
彩香:これからは、ふたりはこれまでの小説のストーリーを知ってるという前提で、今後のストーリーが展開します。読み手にそれと感じさせないための演技力が求められるかな。
結香:わたし、みきさんが
みき:それはぜったい、お願いします。
彩香:わたしからも結香にお願いね。
結香:わたしに責任をかぶせるのは納得いかないな。ぜひとも書き手の須藤彩香さんの力量でなんとかしてください。
みき:それって、エロ小説家ルーツの書き手から脱皮するチャンスかも。
彩香:やっぱり、スナイパーを雇おうかな。
みき:わたしは引き受けませんからね。
結香:ところでみなさん、このあとの予定はありますか。もし時間があるなら、もう少し「オフレコ」でおしゃべりしませんか。
彩香:わたしはいいわよ。
みき:わたしも。どこか、行き先のあてはありますか?
結香:イタリアンレストランがいいんじゃないか、と。
彩香:それは、もしや。
みき:ひょっとして。
結香:そうです。ピザを食べに行きませんか。
彩香:それじゃあ、翔太も呼び出そうか。
(完)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます