詩8編 夜の蜃気楼

栗栖亜雅沙

雲と銀色

あるかなしかの声は銀色

もう比べようもなくて


田に囲まれた側溝の

アメリカザリガニの夢は叶わず

渡航より繁殖を選ぶ


永遠に続く蜻蛉の羽音は

せせらぎの向こうへわたしを誘う


こうしていると夢まで澄んで

夏の夜空に打上げられる

わずかばかりに塗りこめられた

嘘などたちまち猫の額


少女の頃の夢を追い

夏の終わりに来たけれど

線香花火も尽きてきた

ジッと落ちたらもうおしまい

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