第7話

その7




「では、オレの方もいいですか?何かトラブルや問題が起こったら、会って、相談に乗ってください。心が折れてる時は寄り添って、優しくして下さい。…可能であれば、今日みたいに抱きあってる間だけ、身も心も溺れていたい。それを以って、次の日からを目いっぱい生きる栄養にします。だから、お互いそういう局面に至ったら連絡する…。そんな関係、いかがですか?」



「はい~💛こちらからもお願いしたいです❢今日みたいな嫌な出来事のあと、こんなはつらつとした気持ちになれるなんて…、言わば奇跡でしたから…。でも、連絡するの、私からだけかも…。私、しょっちゅう落ち込んでるような、弱い人間ですから…」



「そしたら、概ねの期間を設けたらどうでしょうか?そうだな…、2年じゃあ長いし、半年だと頻繁すぎるかな…。その辺の不倫族と一緒じゃあ、今の気持ちも萎えそうですし…。1年から1年半…、このくらいの目安で、よほど深刻な事態は別として、少々辛いこともなるべく1年半近くはおのおの頑張る…。で…、会った時には、その時点でお互いに抱える悩み事や辛いことを交わし合いましょう‥。溺れあいましょう。はは、できれば今日みたいにカラダも…」



「ハハハ…。いいですね。そのくらいの頻度って、なんかステキだなあ…」



”あの時のミユキの表情と笑い声も忘れられない‥。それにしても…、いろんな意味をひっくるめての、あの際のステキというフレーズが口から出るその感性…。その場のオレ、ちょっと衝撃を受けたかな…”



***



「…それでは、これが私のポケベル番号です。呼ばれたらなるべく20分以内にそちらの自宅へ電話します。20分以上たっても電話が鳴らなかったら、自宅に電話してもいい状況の時に再度ベルを鳴らしてください。こちらも、20分過ぎたら敢えて連絡はしません」



「わかりました…」



「はは…、人間、だいたい健康面とか経済的な諸問題とかの大きな難事というのは、最低でも3年か5年間隔ですよ。無論、細かい悩み事は常に抱えてるでしょうが、1年半後を目安に踏ん張って、そこで重大な問題がなければ、その間の諸々は互いに聞きあいましょう」



「はい、よろしくお願いしますね、有島さん…。ああ…、なんか、すごい支えがができた感じで、気持ちがズンと楽になりました。これから1年半程度、私なりに頑張ります。ううん、頑張れると思いますので…」



二人の、”基本的ルール”はうす暗いラブホテルの一室で決まった。

以来、有本裕一と長谷ミユキは実に20年以上、この日に定めたペースで自称、”互いの人生に有意義な不倫関係”を継続していったのであった…。


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