妖精
異界ラマ教
第1話
わたしには妖精さんが見えるの。
絹みたいな羽根とエメラルドみたいな洋服、それにルビーみたいな目をした可愛らしい妖精さん。
先生や看護師さんは信じていないのが分かる笑い方で誤魔化すけど、本当にわたしには見えるの。
わたしのベッドの側の窓から時々中を覗き込んでいて、病院の中には入って来れないけれど、みんなで楽しそうに飛んでいて、わたしもずっと一緒に飛んでみたいと思ってたの。
お話しはしたことないけど楽器みたいな音色を奏でたり、わたしの気を引こうとこんこんと窓をノックしたりして、きっとすぐに友達になれると思うの。
うん、だからわたし、勇気を出してみようと思うの。
先生ももう病院を好きに歩いてもいいよって言ってくれたし、きっと許してくれるわ。
窓の開け方は看護師さんを見てたからわかるの。
誰にも見つからないように、こっそり鍵を開けて。
重い窓をゆっくりと、時間をかけて開けたわ。
そうしたら、たくさんの風と、わたしを迎えに来たみたいに妖精さんたちが飛び込んできたの!
わたし、嬉しくなってしまって、妖精さんたちも嬉しいみたいで綺麗な音色を鳴らして手を引いてくれたの!
もしかしたら、看護師さんが言ってたみたいなお花畑に連れて行ってくれるのかしら!
初めての外は少し怖いけれど、妖精さんたちと一緒なら飛んでいけると思うの!
けたたましいサイレンの音と共に二人の警官が駆けつけた。
「うわあ、これはひどい。事故ですかね」
「いや、自殺かもしれないぞ?さっき聞いた話によると余命数ヶ月だったそうだ」
「可哀想に……。心が傷みますね。」
「ああ、ほんとにな。……虫が寄ってきたな。殺虫剤を持ってきてくれ」
赤い花畑には妖精が数匹飛んでいた。
妖精 異界ラマ教 @rawakyou
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます